グリーンランド(8)~帰途多難、大幅遅延で乗継不能も

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 アイスランドとグリーンランドの2週間の長旅を無事終え、帰途につく。地球の裏側から、北極圏から赤道直下までの移動はまた大変。飛行機の乗り継ぎは3回、空港1泊、機中1泊というカレンダー上3日がかりの大移動である。

 8月18日(金)早朝5時起床、5時半朝食。6時、ホテルの送迎でイルリサット空港へ。まずは、イルリサット発カンゲルルススアーク(Kangerlussuaq)経由のコペンハーゲン行き便をチェックイン。前日ウェブチェックイン済みなので、荷物を預けて手続終了。

イルリサット発カンゲルルススアーク行GL501便の機材

 グリーンランド航空GL501便のプロペラ機は、定刻通り7時20分イルリサットを出発し、8時10分カンゲルルススアークに到着。到着すると、すぐにコペンハーゲン行き乗継便の使用機材状況にチェックを入れる。これも定刻通り、コペンハーゲンから飛来する機材の到着表示が出ていた。ひとまず安心。

 10時、使用機材が着陸、駐機スポットに入ることを確認。予定乗継便は、グリーンランド航空GL780便のカンゲルルススアーク11時40分発だから、1時間半以上の整備時間もあれば、間違いなく定刻出発できるだろうと読んだ。

カンゲルルススアーク発コペンハーゲン行GL780便の機材

 しかし、私の読みが見事に外れた。モニターには「Delay」表示が出、新しい出発時刻は12時55分。1時間15分も遅延か。到着が予定時刻の20時よりも遅れて21時台になり、コペンハーゲンのエアポートホテルにチェックインして、レストランで夕食が食べられなくなる。それでも、空港で適当にサンドイッチでも買って部屋で食べればいい・・・。

 そんな私はまたまた甘かった。11時頃、モニターの「Delay」時刻がなんと、12時55分から21時55分に変わった。21が12の入力ミスではなかろうかとカウンターに問い詰めると、間違いなく夜の21時55分だった。10時間の遅延、冗談じゃない。といっても、否応なしにカウンターから食事券が配布され、しかも昼食と夕食の2回分。これで確定だ。

 遅延による待ち時間の長さよりも、さらなる疑念が持たれた。それは、3度目の遅延はあり得るかだ。コペンハーゲン発のタイ国際航空の乗継便に間に合わないリスクが生じたからだ。3度目の遅延でさらに数時間遅れた場合、バンコク便を逃がすことになる。深刻な問題だ。

 代替便で先発のコペンハーゲン行便はないかと、チェックする。結果はすぐに分かった。――ない。孤島グリーンランドの寂れた空港を飛び立って欧州大陸本土に向かう飛行機は1日1便あるかないかの世界であった。アイスランドのレイキャヴィーク行き便も出発が遅れ、アイスランド経由のコペンハーゲン行き案も排除された。

 絶望的だ。落ち込んでも仕方がない。とりあえずご飯を食べようと、もらった食券でランチを取る。チキンカレーがまあまあ美味しかった。

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グリーンランド(7)~氷山の一角と氷山の転覆、哲学的示唆

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 8月17日(木)、グリーンランド西岸イルリサットの海から北上する船旅に出る。前夜から天気が崩れ出し、当日はあいにくの雨天、いやそうでなく、幸運にも雨天に恵まれる。

 まずは年間日数の3分の2が雨や雪のアイスランドでは、奇跡的にも前後が雨で滞在中の数日だけが快晴だった。グリーンランド到着後の氷河トレッキングも雨後の好天だった。今回の2週間という長旅中、たった1日だけの雨ということで文句を言ったら罰が当たる。

 「皆さんは幸運です。これがグリーンランドの本来の姿ですから」。ツアーガイドのティナーさんがやや興奮気味に語る。商売上のパフォーマンスなのかもしれないが、嘘ではない本当の一面もあるので、そのまま受け止めておきたい。

 船は出港してエキ氷河(Eqi Glacier)を目指して一路北上する。低く垂れ込めた厚い灰色の雲をバックに海がやや荒れ気味。海面に浮かぶ氷山は冷たい青灰色を呈し、怪しい透明感を帯びている。

 いや、「海面に浮かぶ」という表現は、単なる私の視覚による直観的な反映にすぎない。まさに、「氷山の一角」というだけにその氷山の9割が海面下に不可知の形で存在しているのである。

 専門家によると、氷山が氷棚から崩落したとき、周囲の環境と静力学的平衡が機能し、一般には氷山の10分の1が海面の上に残り、残りの10分の9は海面下に沈むという。氷は水面に浮かぶというわれわれの常識、そして肉眼の視覚による直観的写像に基づけば、ついつい「海面に浮かぶ氷山」という論理的誤謬に至る。

エキ氷河到着

 そして、さらなる変化が海面下で起きる。海中では氷山が溶け始める。要するに同じ氷山でも海面上の部分が空気、海面下の部分が海水という異なる外的変動要因をそれぞれ抱えているのだ。そこで、海面下の氷山が徐々に溶け始め、ある時点で全体的バランスが崩れ、氷山の上下が逆さまになるそうだ。

エキ氷河

 このいわゆる「氷山の転覆」現象はめったに目撃することができないので、あまり知られていないようだ。「氷山の一角」から本質的な部分に突っ込むと、水面下の変化の進行から、最終的に「氷山の転覆」という均衡の崩壊に至る全体像が浮かび上がる。

 これは哲学的な示唆であり、様々な事物に共通する基本原理として肝に銘じたい。

 昼、船はエキ氷河に到着。船上でランチを取り、1時間半ほどの停泊を経て帰路につく。夕方、イルリサットの小さな港に帰着したとき、小雨がまだ止んでいない。

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グリーンランド(6)~極寒の地、カラフルな街並みと白夜

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 イルリサットの家々は、カラフルだ。北極圏、暗くて灰色のイメージがある。長い冬と極寒、陰鬱な日々が続く中、視覚や気分を明るくしてくれるのがこの鮮やかな街並みである。

 そして短い夏には、白夜が訪れる。ミッドナイトサンといって、真夜中の太陽が極北の地を照らし、生命力の回復を謳歌しようとする。けれど、その太陽の光はなぜか切なく、冷たさすら感じさせるのである。

 暖かさを与える前に、白夜の太陽はまず寒さと戦わなければならないからだ。光と熱は必ずしも共存しない。白夜はある意味でその相反関係と営みを示唆するものだ。

 人生には漆黒の闇がしばらく続くと、幻想的な白夜が訪れることがある。それが暖かさを伴わない明るさだったりし、タンゴのように情熱的なリズムに合わせて一縷の切なさが妖艶に踊る。

 青春、朱夏、白秋、玄冬。人生は一度限りの四季に喩えられつつも、角度を変えてみれば、光と闇の移り変わりとも見て取れる。人生は苦痛の連続だ。故に裏返せば、何をすればよいかを考え抜くのが人生なのだ。

 闇にただひたすら堪えるよりも、そこで心の白夜を自ら作り出すことこそが積極的なニヒリズムではないか。その白夜の太陽は幻想的で弱々しくも冷たいかもしれない。でも、少なくとも漆黒の闇よりはましだろう。

 光さえあれば、カラフルな色彩も意味を持ち始める。積極的な人生とは意味を作り出すものだ。

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グリーンランド(5)~青天の霹靂、北極圏にも中国人爆旅

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 私の場合、食べることが好きで、旅に出る前に事前調査で食べたい食材や料理をリストアップするようにしている。今回、北極圏のグリーンランドでの食リストに上がっている食材品目は、以下の通りである――。

 ズワイガニ、ジャコウウシ、オヒョウ、トナカイ、北極野ウサギ、ライチョウ、オオカミウオ(狼魚)、ウニ、レッドフィッシュと並んでいる。

 その多くが食べられなかった主因は、宿泊ホテルであるアークティック(Hotel Arctic)のレストランにあった。ホテル・アークティックのメインダイニング「Restaurant Ulo」のレギュラーメニューを事前確認したところ、以上の食材のほとんどが扱われていることで、安心していた。

 しかし、チェックインすると、悪いニュースを知らされた。――滞在中の2泊は、「Restaurant Ulo」は中国人団体ツアー客による貸切のため、一般営業を中止すると。

ホテル・アークティックの客室から氷河がみえる

 青天の霹靂。予約満席なら時間帯をずらすとか、なんとか哀願して入れてもらえる手立てがあったかもしれないが、貸し切りだと如何しようもない。ルームサービスやカフェで注文を取り寄せることも打診したが、ダメだった。両日ともレストランの厨房は貸切ブッフェしか用意できない。

ホテル・アークティックからの展望

 運がよほど悪かった。と思ったら、そうではないようだ。イルリサットの街で一番のホテル、アークティックは、もう中国人団体ツアー客に乗っ取られたことは、現地で誰もが知っている事実だった。そこまで事前調査ができていなかった私自身の責任だ。

 ホテルの入口に掲示されている総支配人の挨拶文をみてもわかる。英語と中国語がメイン言語として真ん中に併載されている。両側に欧州各国語があっても、日本語はない。

 爆買の次は爆旅。その爆旅先ももはやパリやロンドンにとどまらず、北極圏、地の果てまで浸透してきているのだ。ホテルとしては、金を落としてくれる中国人客を優先させる方針も、非難されるべきではない。商業的観点からすれば、むしろ正しい経営判断なのだと私も思う。

 嗚呼。私の美食夢が無残に打ち破られた。夕食の時間帯、ホテルのメインダイニングは、中国人専用となり、他の客は小さなカフェに追いやられ、限られたメニューから選ばざるを得なかった。

 まあ、食べられるだけでも幸運だったのかな・・・。

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グリーンランド(4)~ズワイガニやオヒョウ、北極美食三昧

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 グリーンランドは、世界最大の島として美食の宝庫である。その筆頭にあがるのが、ズワイガニ。現地では、雪や氷の極寒海域に生息している故に「Snow Crab」という英名が使われているが、まさにその通りである。

 漁獲後船上で瞬間冷凍して船凍品として日本にも輸出しているが、やはり現地で水揚げして直送するものには勝てない。身の甘み(極甘)と、ほどよく繊維を感じる食感がたまらない。持参した醤油とわさびだが、醤油は無用でわさびを少しつけるだけでいただく。

 ただ不満がある。日本では片方の肩と脚をまとめた半身で販売されることが多いが、グリーンランド現地の場合、脚だけが供されており、甲羅どころか身がついてこないのだ。残念だ。あと、贅沢に言わせてもらうと、旨味や香りを強化する炭火焼も出してほしかった。

 魚の部では、なんといっても、オヒョウだ。形状や生態はカレイに似ていて、1mを超える巨大カレイといったところだが、体だけが大きくても決して大味ではない。ソース仕立てもいいが、これも贅沢にいってしまえば、刺身や煮付、あるいは唐揚が食べたい。

 肉の部だと、ラム肉はアイスランド同様、申し分なし。肉質は柔らかくて臭みがまったくない。肉汁がしっかりソースに溶け込んでいるので、パンにソースをたっぷりつけて食べるのが最高。

 さらに、グリーンランド地産のジャコウウシも素晴らしい。ただ焼き加減はレアと注文したのに、出てきたのは、ミディアムに近いミディアムレアだったのが残念。ブルーレアで注文すればよかったと後悔している。

 と、いろいろ贅沢な文句もいっているが、グリーンランドの美食三昧には大満足している。

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グリーンランド(3)~グリーンランド在住日本人に奇遇

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 北極圏のグリーンランドには、たった3人の日本人が住んでいる。私が偶然の機会で、そのうちの1人に出会った。

 イルリサットの街で昼食を取ろうと入ったレストラン「イヌイット・カフェ(Inuit Cafe)」。笑顔で迎えてくれたのはなんと日本人だった。まったく予想もしなかった出来事、思わず記念写真の撮影を求めた。

 ヨウコさんはデンマーク本土住まいだったが、数年前からグリーンランドに移住し、いまはイルリサットの街で働き、暮らしている。それにしてもグリーンランドにやってくる日本人旅行者、特に個人旅行者もまた珍しく、ヨウコさんも驚いた。

 日本人客とわかると、すぐに鯨料理を薦められた。鯨ステーキにご飯を添えてくれるのがあり難い。もうパン食の連続で、ご飯への恋しさが募るところだった。鯨肉の味もまた素晴らしく、ソースをご飯にかけて頬張った。

 グリーンランドのローカルビールも珍しい。昼というのに、2本もあっという間に空けてしまった。

 グリーンランドを訪れた日本人旅行者は年間僅か400名未満。デンマーク政府の統計によれば、2014年には393人だったという。日本ではグリーンランドの知名度が低いうえ、飛行時間が長く、旅費もかさむなどの阻害要因が挙げられている。

 ヨウコさんによると、最近日本のTV番組がグリーンランドの題材を取り上げ始め、彼女自身も現地で取材の協力を引き受けていた。さらに、大手旅行会社も宣伝を拡大したところ、日本人旅行客数が少しずつ増えるようになったという。

 それでも、ツアー客がほとんどで、私のような個人旅行者は年間数十名いるかいないかの状態だった。

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グリーンランド(2)~大氷河トレッキング、静寂と畏怖の瞬間

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 北極圏、グリーンランドの大氷河。世界遺産イルリサット・アイスフィヨルド(Ilulissat Icefjord)の外観を全貌的に見るには、ヘリコプターかトレッキングしかない。楽なのは、ヘリコプターだが、ただあのエンジン音で氷河の静寂が抹殺されてしまうので、まずは選択肢から外された。

 トレッキングだ。私の一番不得意な山歩きしかない。イルリサットの街から少々外れたところに、赤と黄色と青の3つのトレッキング・コース(地図上の表示)がある。歩く距離にしては、赤が短、黄が中、青が長になっている。

 赤コースは短すぎて物足りなさが残りそうだ。青コースは一部ウッドデッキが敷かれており歩きやすいが、後半は単調な景色になってしまい、また所要時間が長すぎるのもネックだった。そこで消去法的に残された選択肢は黄色コース。

 「絶景」という言葉をいままで如何に無節操に濫用していたか、イルリサット・アイスフィヨルドを見てそう痛感した。地球の最北に、大自然が見せ付けてくれるその偉大さ。言葉も出ない。

 風の流れる音が一瞬止むと、地球という星に存在する本来の静寂が空間のすべてを占領し、「無」を意識させる。人工的な要素がすべて排除されたとき、人間の心はもっとも原始的な状態に戻る。その瞬間に生まれる思考停止は、あらゆる感情や本能や観念を奪い去る。

 この瞬間を体験するために、最北の地にやってきたのだ。人間と自然の対話など到底ありえないことを思い知らされた瞬間でもあった。畏怖の念しか持ち得なかった。

 トレッキング中には時々、このような放心状態の時間を楽しみながら、先へ進んでいく。黄色コースは所々難所があってきつい。道らしい道はなく、足元は常に岩場。アップダウンの激しい岩山を2つほど越えたところ、かなり体力を消耗していた。外気温度が10度程度だが、シャツ姿でちょうど心地よい。

 2時間半ほどかけてコースを踏破。

 イルリサット・アイスフィヨルドはどのような世界遺産なのか、まずは世界遺産登録基準を引用すると分かりやすい――。

 (7) ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
 (8) 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。これには生物の記録、地形の発達における重要な地学的進行過程、重要な地形的特性、自然地理的特性などが含まれる。

 グリーンランドの約80%以上が北極圏の氷床と万年雪に覆われている氷の世界であり、まさにアイスランドよりも、本物の「アイスランド」である。

 「イルリサット」という街の名前も、グリーンランド語では「氷塊」を意味する。北半球で最も多くの氷山が生まれるフィヨルドとして知られている。

 イルリサットの氷河は1日あたり20~35mも流動し、年間200億トンの氷の流量がある。氷河より海に流出した氷塊は、砕けて様々な大きさの氷山となるが、氷山のサイズによっては浅海底に接触しその場に留まるものもある。外海に流出した氷山は、海流により一時北方向に運ばれた後に南へ方向を転じ、大西洋へ流出する(ウィキペディア引用)。

 さらにいうと、あのタイタニック号と衝突し、豪華客船を沈没させた氷山も、ここから大西洋へ流出したものだったと言われている。

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グリーンランド(1)~最北の地を目指す、イルリサットへ

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 旅はまだ続く。

 8月16日(水)、早朝6時40分。レイキャヴィーク発のグリーンランド航空GL717便で、イルリサットへ向かう。

 使用機材は、デ・ハビランド・カナダDHC-8の双発ターボプロップ旅客機。30席強の小型機だが、搭乗客の半分以上は中国人観光客。

 現地時間6時30分頃、グリーンランドの東海岸線にさしかかると、いきなり3000メートル級の山々が視界に入る。

 8時、定刻よりやや遅れて、機体がグリーンランドのイルリサット空港に着陸。

 空港というよりも、小さすぎて、バス停のような施設である。

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アイスランド(15)~爆旅で嬉しい悲鳴、わが世の春を謳歌

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 日本よりも物価高のアイスランド。それに対して給料はどのようなものだろうか。現地の人に聞いてみた。

ホエールウォッチングの船旅

 大学新卒で一般的なオフィスワーカーなら、初任給は日本円にして約40万円。ただ所得税や年金積立、社会保険料で45~50%も差し引かれるので、手取りは20万円そこそこ、日本と大差はない。

 ツアーバスの運転手で8~10時間の日帰りツアーを連日引き受け、フル勤務すれば1か月100万円ほどの賃金が入る。これも半分くらい税や社会保険でもって行かれる。

 北欧国らしく、アイスランドの社会福祉は大変発達している。大学も国公立なら学費無料(なんと、外国人留学生にも適用する)になっている。失業保険もある程度しっかりしている。

レイキャヴィーク市内を一望

 一番気になるのは年金。それもどうやら結構な金額でちゃんと出ているという。これからも、日本のような「年金危機」が多分ないだろうと、アイスランド人はそれだけ政府を信頼しているようだ。

 物価の話にもどるが、アイスランドの消費税は、標準税率が24%(一部食品が12%)と、日本の3倍に上る。かといって国民から不満の声が上がっているかというと、それもあまり聞かれない。むしろアイスランド人に言わせてみれば、日本の消費税が安すぎるのではないかと。

 高いレベルの社会福祉を求めるなら、高い税金や保険料を引き受けるのも当然だと、多くのアイスランド国民が現行の社会制度に大きな不満を抱いていないようだ。

 人口34万しかないアイスランド。諸事情も異なり、日本と単純比較できないが、ただ、高福祉・低税金というあり得ない反比例を求める日本人がいるとすれば、やはり理性的とはいえないだろう。

 アイスランドといえば、数年前の金融危機を想起せずにいられない。2008年9月のリーマン・ショックを機に銀行経営が行き詰まり、当時の首相が国家破綻の危機にあると宣言した。以来、同国はどうやら順調に回復したようだ。

 今年の3月に、アイスランド政府は金融危機で導入した資本規制のほぼ全てを解除する方針を発表し、国際資本市場への復帰を実現した。

 アイスランド経済はいま、好況だ。とりわけ、記録的なペースで成長する観光業を追い風に、経済が拡大を続けている。観光客がアイスランドに殺到している。レイキャヴィークは深刻なホテル不足に陥って、市内のあちこちに見られる建築現場のほとんどがホテル建設だという。要するに、「爆旅」ブームだ。

レイキャヴィーク市内はホテルの建設現場だらけ

 外国投資も急増している。むしろ急激な資金流入が問題になりつつある。昨年のGDPは前年比7.2%増。家計支出と設備投資という2本立てが高成長を主導した。失業率は3%前後に低下し、インフレは抑制されている。

 まさに、わが世の春を謳歌するアイスランドである。

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アイスランド(14)~物価高は半端じゃない、日本の倍以上

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 アイスランドの物価が高い。

 レイキャヴィーク市内での宿泊ホテル、アイスランド航空系のマリーナは4つ星レベルだが、1泊3万7000円もする。清潔で機能的だが、狭い。タイやマレーシアあたりの東南アジアなら、この程度のホテルは1泊4000円もしないだろう。10倍の差だ。

 グリーンランドへ向かう早朝便に乗るため、前夜空港に泊まる。ケプラヴィーク国際空港のエアポート・ホテル・オーロラ・スターは3つ星級だが、1泊3万3000円。

 ちょっと良いホテルに泊まるとなると、目玉が飛び出るほどの高い宿泊料を取られる。ブルーラグーン温泉のシリカ・ホテルは5つ星リゾート。私が泊まったスタンダードルームで平日の割引料金になるが、1泊8万9000円(アーリーチェックインと簡単なブッフェ朝食込み)。

 さらに驚くべきことだが、高い料金の割りに、サービスを受けることはほとんどない。どのホテルも、荷物を運ぶのもコーヒーを注ぐのも全部宿泊客が自分でやらなければならない。アイスランド人の人件費が高いので、セルフサービスが基本。

レイキャヴィーク市内風景

 食べ物も高い。ドライブインのカフェでホットドッグ1個とコーヒー1杯だけで2000円はかかる。ちゃんとしたレストランで食べるランチセットは3000円~6000円、夕食となると1万~2万円。ワインリストを見てもため息が出る。一番安いハウスワインでも6000円以上はする。

レイキャヴィーク市内風景

 スーパーやコンビニなら安いと思ったら大間違い。日本の感覚でまあ1500円くらいの買い物かなと思って、レジにいって勘定したら3000円~4000円の支払い。「ボーナス(Bonus)」という「格安量販店」があるが、大体郊外にあるし、車がないといけない。それでも日本の相場よりは倍くらい高い。

 とにかく、何でも高い。平均的にいえば、アイスランドの物価は東京の2~3倍、ものによっては5倍以上もあり得る。

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