中国市場のパラドックス、本物生き残るポスト爆買い時代

 中国経済が急減速している。だが、国内消費市場はまだ隆盛だ。この相反する現象をどう解釈するか。

 マッキンゼーの直近の調査報告では、「中国人労働者は若年層が多く、重大な経済衰退を経験したことがない。賃金が僅かでも伸びていれば、将来を楽観視し、中産階級の夢を持っているだろう」と解釈されている(10月27日付「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」オンライン)。

 言及されていないのは、もう一つの要素、タイムラグ(時間のずれ)である。日本のバブル崩壊も景気減退の実感を持たれるまでは3~4年(89年~93年)かかった。要するに、資産の劣化が一定の期間を要する。

 資産の劣化に対し、防衛体制が強化される気配がある。たとえば資産の海外流出。

 地下銀行に注目してほしい。上記と同日10月27日付「ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)」オンラインのレポートによると、中国の地下銀行は、ここ数年毎年の取扱高は人民元8000億元規模にも上り、今年は従来を上回る勢いである。それと連動しているように、中国の外貨準備高がどんどん減少している(中央銀行の元相場維持のためのドル売りも含まれるが)。

 正規銀行ルートへの海外送金は、中国人一人1年に5万ドル。家族4人で考えれば年間20万ドルを海外送金できる。それが賄えず地下銀行も使わざるを得ないとなれば、中産以上のかなりの富裕層や資産家ではないかと勝手に推測する。

 資産劣化防止、つまり資産防衛策が次々と打たれている。総量的に中国市場は規模が大きいので、国内消費が即座に落ち込むことがなくても、中長期的に楽観できるのか。資産防衛の一線を越え、生活防衛にも中国国民(層が若干違うが)が目覚めたとき、市場が一変するだろう。

 「経営者にとって最重要の仕事とは、すでに起こった未来を見極めることである。社会、経済、政治のいずれの世界においても、変化を利用し、機会として生かすことが課題となる」

 ドラッカーが「断絶の時代」でこう語る。中国市場という現場で、「すでに起こった未来」とは何か。私たちはその「すでに起こった未来」を見つめているのか。そして、その未来に備えて何をしたか・・・。

 たとえ負の変化であっても、必ず機会があって、それを生かすことができるのだ。正の変化に便乗するのは簡単だが、負の変化を機会に換えるのに大きな知力、胆力と迫力が必要だ。そこで競争者がどんどん脱落していくなかで、より大きな機会が現れ、千載一遇の商機がそこで待っているのかもしれない。

 爆買いブームが過ぎ去ったあとの市場に、本物が残る。そう願ってやまない。

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