アラブの旅(23)~ソースコード、中東・アラブ食文化の源泉

<前回>

 私はある固定概念を持っていた――。中東・アラブの料理は美味しくない。これは完全に間違っていた。とても愚かな固定概念で、コンサルタントという職業柄には、恥ずべき思考の持ち方であった。

 少し前、イスタンブールで数多くの美味に接した時点で、それでもトルコ料理は一応世界三大料理の1つで、まあこんなものだろうと納得したものの、本音ではフランス料理と中華料理と同格扱いされることにはかなり抵抗があった。

 今回の中東旅行で、私の固定概念が根底から覆された。それは決して味覚的に、広義的な中東料理がフレンチや中華を超越したわけでなく、奥の深さという文化的次元において貫禄を感じ始めたのであった。

ドバイ市内のレバノン食堂「Zaroob」

 中東の食文化全体に対して、自分がいかに愚昧で矮小か、これを鞭打ち的に痛いほど思い知らされた。つまるところ、それもひとえに中東・アラブ地域に対する学習の怠慢や認識の欠落にほかならない。

 料理が美味しいとかまずいとか、個人的感度にも差異があるだろうが、あくまでも味覚次元の話である。しかし、表象を超えての深層に至ったところで、文化や歴史的な蓄積という結晶に対しリバースエンジニアリング的な分解を行うことによって、そのソースコードを入手できれば、視野が一気に拡がるだろう。

 私はようやくその入り口に立った。

<次回>