アメニティグッズ経済学、私の「せこい」旅スタイル

 ホテルのアメニティグッズを持ち帰る。これって、大声で人様に言えることだろうか。

 私はたびたび出張先のホテルからアメニティグッズを持ち帰る。これをフェイスブックに投稿したら、「立花さんらしくない」という方もおられた。よく分かる。あまり大声で言えることを大声で言ってしまったからだ。

 まず、持ち帰ってよいかどうかのことについて、イエスという答えに異論はないだろう。使い捨てタイプのシャンプーやコンディショナー、ソープからスリッパまで、このようなアメニティグッズは宿泊料金に含まれている以上、所有権は宿泊客にある。持ち帰らないことは、所有権を放棄することだ。

 次に、合理性。使い捨てタイプのアメニティグッズは、開封したらもう使い物にならないし、次の客に回すことなく、客室清掃係に処分されてしまう。

 未開封のものを残した場合、恐らく使いまわしになるだろうと思って、以前、私はホテル勤務の友人に聞いたことがある。その答えはこうである。「ケースバイケースだ。新品同様の状態に限って再利用するが、少しでも外見上汚れた場合は破棄処分とする」。たとえばシャワーブースに入っているアメニティグッズは、シャワーで汚れた場合、たとえ未開封でも破棄処分される。

 ホテルの経営は基本的に、使い捨てタイプのアメニティグッズは、1室1泊単位でコストとして計上し、利益を算定・確保している。その分客がこれらを使わず、もらわず、新品同様で再利用可の状態で残した場合、ホテルの予定外の利益になるだけである。もちろん、これは客の判断に委ねられている。

 1室1泊単位の計算は金銭的なものであって、実際にアメニティグッズの量は合理的消費以上の量が用意されているのが常である。シャンプーも石鹸も少々潔癖症気味で反復洗浄を繰り返す客以外、使い切ることは少ないだろう。であれば、破棄処分によって確実に浪費となる。

 私が使い捨てタイプのアメニティグッズを持ち買った場合、ほぼ100%これらを自宅で1本1本最後まできれいに使い切っている。スリッパも1泊だけで捨てるのがもったいない。特に厚みがあってふかふかのコットン地の上質なものなら、自宅では1週間ほど使っている。出張の多い私は、シャンプーやコンディショナー、石鹸、スリッパなどは、ここ10年、自宅ではほとんど買ったことがない。自慢にならないかもしれないが、家計費で計算すると馬鹿にならない金額である。

 とはいってもこの類のことは、一般的な、日本的な感覚では、「せこい」といわれる。多分私は通常「せこい」人と見られていないから、「らしくない」と言われたのであろう。でも、時々「せこい」という一面をもつのも真実の私であって、いかにも自分「らしい」部分を隠すつもりはない。