別紙ビザ、領有権問題の中国旅券にベトナムが奇策

 先日中国人スタッフのベトナム出張ではじめて知ったことだが、中国人の所持する旅券(パスポート)タイプによって、ベトナム政府は異なるビザを交付している。

 旧型旅券には、従来通りのビザ・シールが直接に張り付けられるが、新型旅券の場合、別紙の単発ビザが交付され、出入国の際もその別紙にスタンプ押印され、旅券本体には一切タッチせず、出入国の痕跡すら残さない。

 原因は、新型旅券8ページ目の査証ページに薄く印刷された南シナ海の「九段線」だった。中国が南シナ海全域に主権や権益が及ぶと主張しているが、ベトナムはこれを認めていない。中国の領有権主張の根拠となっている「九段線」が問題になり、そのページだけでなく、中国旅券全体へのスタンプ押印をベトナム政府が拒否したのだった。

 中国への抗議の意思表明である。調べると、ベトナム以外には、フィリピンやインドなど中国と領有権を争っている国々も抗議し、別紙ビザを交付しているようだ。

 ベトナムにはさらに強力な対抗措置も取れるのだ。別紙ではなく、ベトナムが主張する国境線が印刷されたビザ・シールを中国旅券に張り付けることだ。そうすると、今度逆に中国が対抗できなくなる。まさか当該旅券の所持者を出国制限するわけにもいかないだろう。

 まあ、いろいろあるが・・・。