アイスランド(15)~爆旅で嬉しい悲鳴、わが世の春を謳歌

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 日本よりも物価高のアイスランド。それに対して給料はどのようなものだろうか。現地の人に聞いてみた。

ホエールウォッチングの船旅

 大学新卒で一般的なオフィスワーカーなら、初任給は日本円にして約40万円。ただ所得税や年金積立、社会保険料で45~50%も差し引かれるので、手取りは20万円そこそこ、日本と大差はない。

 ツアーバスの運転手で8~10時間の日帰りツアーを連日引き受け、フル勤務すれば1か月100万円ほどの賃金が入る。これも半分くらい税や社会保険でもって行かれる。

 北欧国らしく、アイスランドの社会福祉は大変発達している。大学も国公立なら学費無料(なんと、外国人留学生にも適用する)になっている。失業保険もある程度しっかりしている。

レイキャヴィーク市内を一望

 一番気になるのは年金。それもどうやら結構な金額でちゃんと出ているという。これからも、日本のような「年金危機」が多分ないだろうと、アイスランド人はそれだけ政府を信頼しているようだ。

 物価の話にもどるが、アイスランドの消費税は、標準税率が24%(一部食品が12%)と、日本の3倍に上る。かといって国民から不満の声が上がっているかというと、それもあまり聞かれない。むしろアイスランド人に言わせてみれば、日本の消費税が安すぎるのではないかと。

 高いレベルの社会福祉を求めるなら、高い税金や保険料を引き受けるのも当然だと、多くのアイスランド国民が現行の社会制度に大きな不満を抱いていないようだ。

 人口34万しかないアイスランド。諸事情も異なり、日本と単純比較できないが、ただ、高福祉・低税金というあり得ない反比例を求める日本人がいるとすれば、やはり理性的とはいえないだろう。

 アイスランドといえば、数年前の金融危機を想起せずにいられない。2008年9月のリーマン・ショックを機に銀行経営が行き詰まり、当時の首相が国家破綻の危機にあると宣言した。以来、同国はどうやら順調に回復したようだ。

 今年の3月に、アイスランド政府は金融危機で導入した資本規制のほぼ全てを解除する方針を発表し、国際資本市場への復帰を実現した。

 アイスランド経済はいま、好況だ。とりわけ、記録的なペースで成長する観光業を追い風に、経済が拡大を続けている。観光客がアイスランドに殺到している。レイキャヴィークは深刻なホテル不足に陥って、市内のあちこちに見られる建築現場のほとんどがホテル建設だという。要するに、「爆旅」ブームだ。

レイキャヴィーク市内はホテルの建設現場だらけ

 外国投資も急増している。むしろ急激な資金流入が問題になりつつある。昨年のGDPは前年比7.2%増。家計支出と設備投資という2本立てが高成長を主導した。失業率は3%前後に低下し、インフレは抑制されている。

 まさに、わが世の春を謳歌するアイスランドである。

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