グリーンランド(5)~青天の霹靂、北極圏にも中国人爆旅

<前回>

 私の場合、食べることが好きで、旅に出る前に事前調査で食べたい食材や料理をリストアップするようにしている。今回、北極圏のグリーンランドでの食リストに上がっている食材品目は、以下の通りである――。

 ズワイガニ、ジャコウウシ、オヒョウ、トナカイ、北極野ウサギ、ライチョウ、オオカミウオ(狼魚)、ウニ、レッドフィッシュと並んでいる。

 その多くが食べられなかった主因は、宿泊ホテルであるアークティック(Hotel Arctic)のレストランにあった。ホテル・アークティックのメインダイニング「Restaurant Ulo」のレギュラーメニューを事前確認したところ、以上の食材のほとんどが扱われていることで、安心していた。

 しかし、チェックインすると、悪いニュースを知らされた。――滞在中の2泊は、「Restaurant Ulo」は中国人団体ツアー客による貸切のため、一般営業を中止すると。

ホテル・アークティックの客室から氷河がみえる

 青天の霹靂。予約満席なら時間帯をずらすとか、なんとか哀願して入れてもらえる手立てがあったかもしれないが、貸し切りだと如何しようもない。ルームサービスやカフェで注文を取り寄せることも打診したが、ダメだった。両日ともレストランの厨房は貸切ブッフェしか用意できない。

ホテル・アークティックからの展望

 運がよほど悪かった。と思ったら、そうではないようだ。イルリサットの街で一番のホテル、アークティックは、もう中国人団体ツアー客に乗っ取られたことは、現地で誰もが知っている事実だった。そこまで事前調査ができていなかった私自身の責任だ。

 ホテルの入口に掲示されている総支配人の挨拶文をみてもわかる。英語と中国語がメイン言語として真ん中に併載されている。両側に欧州各国語があっても、日本語はない。

 爆買の次は爆旅。その爆旅先ももはやパリやロンドンにとどまらず、北極圏、地の果てまで浸透してきているのだ。ホテルとしては、金を落としてくれる中国人客を優先させる方針も、非難されるべきではない。商業的観点からすれば、むしろ正しい経営判断なのだと私も思う。

 嗚呼。私の美食夢が無残に打ち破られた。夕食の時間帯、ホテルのメインダイニングは、中国人専用となり、他の客は小さなカフェに追いやられ、限られたメニューから選ばざるを得なかった。

 まあ、食べられるだけでも幸運だったのかな・・・。

<次回>