夜間飛行とキリギリスの冬支度

 日本から来た方に上海の印象を尋ねると、「元気」と答える人がほとんど。最近聞かなくても、「日本国内は暗い。上海は元気でいいですね」と印象を言ってくる。

 映画の上映が終わり、真っ暗闇の映画館から外に出ると、「明るい」「眩しい」と感じる。そんな体験はお持ちだろう。コントラスト比があまり強烈過ぎると、人間に少なからず錯覚を与えてしまう。

32761_2

 飛行機の着陸に備えて、サンシェードを開けるように客室乗務員に指示される。暗い場所から急に明るい場所に出ると、目がくらんで周囲の状況を確認できないし、また機敏に行動もできない。非常脱出時にこういう状態になると、脱出シューターを出たところで立ち止まったり、状況が一瞬見えなくなったりする人が出るため、少しでも明るさに慣れるようにサンシェードを開けさせるわけだ。

 逆に、夜間飛行の着陸に備えて、機内の明かりが一斉に落とされる。暗さに乗客の目を慣れさせる意図が込められているのだろう。

 マクロとミクロの関係でもある。明るいマクロ環境に目を奪われると、ミクロの周りや足元が真っ暗になって、一歩踏み外すと命取りになる。

 「日本はもうダメだ、中国の時代だ」と言っているのがメディアだけではない。私のいるコンサル業界でも、「中国へいらっしゃい」コールが凄まじい。そういうときだからこそ、リスクを冷静に考えるべきではないか。どんな国でも、必ず繁栄と衰退のサイクルがある。中国も例外ではない。いま、死語になりつつある「カントリーリスク」だが、死んではいないはずだ。それを死なせる企業の元にはいずれ死神が訪れることだろう。

 中国の繁栄を謳歌するなか、企業に必要なのは、キリギリスの冬支度だ。