ペテン師に騙される人、被害者は敗者である

 「ペテン師だ」

 退陣する意向を表明した菅直人首相が来年1月ごろまでの続投に意欲を示したことを受け、鳩山由紀夫前首相は「ペテン師だ」と批判し、「人間としての基本にもとる行為をするなら党の規則の中で首相に辞めてもらう」と早期辞任を求めた(2011年6月3日付「日本経済新聞」記事要約)。

 もし、菅直人首相がペテン師だったら、ペテン師を首相にしてしまった制度や関係者に大きな問題があったのではないか。鳩山氏本人も、ペテン師の菅さんを鳩山内閣のナンバー2(副総理、第一順位大臣)に任命した政治責任はないだろうか。

 騙された、と被害者ぶった面した政治家自身が大きな問題だ。いや、もしや、ペテン師を知った上での不信任反対票だったら、もっと大きな問題だ。

 中国ビジネスでは、「騙された」と被害者ぶった面で中国人の悪口をいう日本人が少なからずいる。日本人を騙した、ある中国人のペテン師はこういった。「この日本人は遅かれ早かれ騙される。そのときになると、パートナーの私も被害者になる。どうぜ騙されるのなら、私が先にやっただけだ」。これはペテン師のロジックだ。邪悪なロジックだが、筋は通っている。

 ペテン師に騙される被害者だが、心に隙間があったのではないか。被害者は敗者である。