刺身にごま油、日本海が地中海に変身するマジックのワイン晩餐会

 「ワインには、油が合います。だから、刺身とワインの場合、刺身にはごま油が良い」

 初耳。ごま油に少々塩を振って、ちょびっと付けて刺身をいただく。ごま油の香味が口腔に残る状態で白ワインをこれも、ちびりといただく。そうすると、刺身は刺身のままだが、塩ごま油がオイリーな醤油に、ワインが淡麗な日本酒に変身していくような錯覚?幻覚?に陥る。この刺身料理は、男性的で荒々しい日本海ではなく、女性的で風光明媚な地中海に似合う。

99787_299787b_2渡部明央氏特別ワインディナー@花園飯店

 昨晩、花園飯店(オークラガーデンホテル上海)で、ホテルオークラ東京チーフソムリエ渡部明央氏特別ワインディナーが開催された。正直、料理は一般的なもので、32階の宴会場まで運ばれることもあってか熱々ではなかった。特に、肉料理はポワレであるだけに「焼き加減」の注文はできず、「ウェルダン」に近い状態で運ばれてくる。かかっているブルーベリーソースも濃厚過ぎて、ご飯を注文せずに食べられなかった。個人的にはシンプルなグリル、せいぜいブラックペーパーソースが少々、それも別々にサーブされるのが好みだった。ただ、宴会料理なのでしかたがない。ホテルに文句を付けるつもりはまったくなく、立花の我がままをダラダラと書いているだけである。

99787_3ワインの解説をする渡部チーフソムリエ

 会の主旨はワイン、そしてワインと料理のマッチング性。渡部氏の解説は分かりやすく、ワインの感性的な表現も抜群だった。ワインのセレクションはストーリー性もあって素晴らしい。チーズとともに供されたEscudo Rojo(エスクード・ロホ)は、ハイコスパワインとして何回も飲んだことがあり、JALビジネスクラスの機内ワインとしても馴染み深い。これ以外のワインはすべて初体験。

 特にアペリティフに出されるテタンジェのシャンパーニュは、名前は知っていたが飲むのが初めて。二種類のテタンジェの飲み比べもなかなか面白い。

99787_4ハタと金華ハムの蒸し料理とハンガリーのTokaji
99787b_4和牛ヒレ肉料理とスペインのAlion

 白ワインでは、ハンガリーのTokaji(トカイ)のフルミントがセレクトされ、それがハタと金華ハムの蒸し料理とくっつけられるのがナイス。貴腐ワインのため、知らないうちに口の中で厚みのある紹興酒に変身していく絶妙なマジックはほぼ完璧な演出だった。それも安価な若い、シロップのような代物紹興酒ではなく、本物陳年ならではのあっさりした淡麗な貫録さが漂っていて、一瞬にして虜になる。

 さらに、ベガシシリアのセラーで熟成した名酒、スペインのロマネ・コンティとも称される「ウニコ」で有名なAlion(アリオン)。最後にデザートワインとして供されるBanyuls(バニュルス)、いずれもストーリー性があって素晴らしい。