ブラックカード、幻本物の幻はやはり要らない

 13年間持ち続けたアメックスのセンチュリオンカード、所謂ブラックカードをキャンセルする。その旨をカード会社に告げた。

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 2000年、アジアで発行された初のブラックカード(香港発行)、まさに幻のカードとして重厚な箱で手元に届けられたとき、嬉しさと不安で胸がいっぱいだった。前職在職中接待や出張の高額消費が多く、積んできた実績を評価されたのか、ほとんど無一文の私にこんな幻のカードを与えてくれて大丈夫かと、逆にこっちが緊張したほどだった。

 資産らしい資産はなく、退職金を起業に賭ける30代半ばの若造に、限度額無制限のブラックカードを発行する。恐らく、その世の中、私一人だけではなかっただろうか。個人情報をすべて申告したし、クレジットを評価したうえでの発行だから、アメックスから寄せられた信頼にはただただ感謝するのみだった。

 13年間使ってきたブラックカードだが、後半、使うことが少なくなり、いつの間にかサブカードに転落してしまった。幻のカードというだけに、過剰の期待をもった私の問題かもしれないが、高額の年会費を払った対価として満足できるものではなかった。活用の仕方や個人的な価値観、主観的認識など、あくまでも、私個人的な感覚で、決してアメックスのプロフェッショナル・サービスを否定するものではない。

 私が所属する香港カードセンターでは、発行当初1万香港ドル弱の年会費が次第に1万9800香港ドルに引き上げられた。高額の海外旅行保険が付いているので、それを考えるとまあいいだろうと。そして、今夏、突然、年会費を3万8800香港ドルにアップするとの通知を受ける。正直、自分のライフスタイルや価値観に照らし、50万円の年会費では受け入れがたい。

 以前、一度脱会を申し出たこともあったが、引きとめられた。今回は、ちょうどマレーシア移住もあって堂々とした理由ができたので、マレーシアのアメックスにメンバーシップを移転することを求めた。マレーシアにはまだセンチュリオン(ブラック)カードが発行されていないことを知っての「確信犯」だった。

 マレーシアでは、一つ下級カードのプラチナカード年会費は初年度無料、翌年から800リンギ(2万5000円)、ブラックカードの20分の1の安さで、しかも海外旅行保険も付いている。これで十分だ。