内なる敵にどう対応するか、ジャーマンウイングス墜落事件の教訓

 ジャーマンウイングスの墜落、大変悲しいニュース。

 思い起こせば、昨年のマレーシア航空連続失踪・撃墜事件のとき、マレーシア航空のいわゆるずさんな運営と管理を非難する読者の書き込みがあって、私はこのような独断的な批判をすべきではなく、全ての事件や事故は必ず多方面の原因が絡んでいるからだと反論した。

 独ルフトハンザ系のジャーマンウイングスとなれば、今度昨年末のエアアジア墜落事故と関連して、LCC(格安航空会社)という共通点から一部LCC経営上の問題点への指摘が出てきた。世の中の物事が大変複雑であって目に見える表面的現象からすぐに本質を突き止められるとは限らない。時には単純なる世俗的、興味本位的な好奇心で議論がとんでもないところに持っていかれたりする。マレーシア航空の連続事故からどこそこの政府の陰謀論などなど、奇想の世界が繰り広げられることは文学的以外に、実務ではどのような効用があろうか。

 AがX属性で問題を起こした。BもX属性で問題を起こした。だから、Xが問題の根源。いわゆる帰納的類推。広範、普遍的共通性を見出すうえでは、帰納的類推は一定の効用を有する。ただ統計学的に一定の量のデータを必要とする。そこから確率や確度といった蓋然性を導き出す。

 真相が少しずつ見えてきた。ジャーマンウイングスの墜落から浮上した新たな課題は、「内なる敵(リスク)」である。従来のリスク対策は、テロなどがすべて操縦室外に存在し、操縦室への侵入を企てることを前提としていたが、この前提が崩れた。

 さらに一歩進んで、今後は、広義的内外結託の犯行も想定しなければならなくなる。今回の場合、副操縦士の意図的行為が指摘されて目線がすべて操縦席に集中しがちだが、客室乗務員はどうであろう。内なる敵(リスク)の想定範囲の射程はどこまで定めるか、それにどのような対策が打てるのか、これは何もLCCに限られた話ではない。

 一般企業もまた然り。内なる敵(リスク)による被害は想定されないだけに、甚大かつ深刻なものになる可能性が大きい。

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コメント: 内なる敵にどう対応するか、ジャーマンウイングス墜落事件の教訓

  1. 異なるイデオロギーや基本的価値観をベースとした国家やコンサルタントや弁護士さんに対しては、かなりのご批判をなさるのに、議論には関心がないんですね。不思議です。

    1.  批判して否定的ですから、議論しても平行線で建設的ではない。共産主義と資本主義どっちが正しいか議論するのと一緒です。正直、太田さんがせっかく書かれたコメントも私はあまり読む気になりません。申し訳ないと思っています。興味がないものはどうしようもないんですね。太田さんは正しいですよ。ご自分が正しいと思えば正しい。世の中十人十色ですから、いいじゃないでしょうか。どうかご自分の信条を捨てずにご自分の美学で美しく生きてください。

  2. さすが立花先生、弱者排除の管理における弱点を埋め合わせる対策をたくさんお持ちなんですね。

    しかし、この弱点は埋められるでしょうか?

    弱者排除によって組織を強化していくということは、今日10点と1点の人がいて、1点の人を排除。そして、新たな競争の中で、10点の人には11点になってもらい、明日は2点の人を排除するということでしょう。その繰り返しで組織を強くしていくということです。しかし、そんなモデルは長期的に成立するものでしょうか。

    今日のニュースに素晴らしいものがありました。

    http://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/snsで広がった衝撃のスピーチ。世界で最も貧しい大統領が語った、本当の豊かさとは?/ar-AAa7r85#page=2

    世界で最も貧しい大統領と言われていた、南米ウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領の言葉だそうです。

    「さて、持続的に可能な発展と世界の貧困をなくすことについて話し合われてきました。しかし、今私たちが目指すべきことは、現在の裕福な国々の発展の消費モデルを真似することなのでしょうか?
    みなさんに質問です。例えば、ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持つことになれば、どうなるでしょう。地球で呼吸するための酸素はどれだけ残るでしょうか。さらに言い方を変えましょう。西洋の富裕層が当たり前とする傲慢な消費を世界の70億~80億人の人がしたら、どうなるでしょう。そんな原料がこの地球上にあるでしょうか?こんなこと可能なわけがありません。」

    全ての人が強者を目指す。そんな社会が成立するものでしょうか。そんな社会は、何の犠牲の上に成立しているのでしょうか。はっきり言えば、地球の未来を犠牲にしているのです。

    「弱者排除の管理を取らなくてもいいんだよ。幸せはそれぞれでいいんだから・・・」という言い草は、地球の未来を犠牲にしている自分たちの罪から目を反らせようとしているようにも考えられます。

    1.  情報ありがとうございました。異なるイデオロギーや基本的価値観をベースとした議論には正直興味がありません。ぜひ、太田さんも素晴らしい弱者になってください(すでになっていたら、そのまま弱者であり続けてください)。世の中の経営者の大多数が太田さんのような理念をお持ちなら、私は間違いなく仕事を失い、弱者コンサルタントに転落して、そのうちウルグアイ移住でも検討しましょう。

  3. 弱者排除の管理の中、内なる敵にどのような対処をするか。大変興味深いですね。弱者排除の管理では、弱者は決して強者を仲間だとは思いません。

    弱者排除の管理の中にチームワークなるものが存在するか?プロ野球選手とかにもチームワークはある。また、強者・弱者管理の会社のプロジェクトを遂行するグループの中にもチームワークは存在するでしょう。

    しかし、これらは、「野球で優勝する」とか「利益を上げる」といった特定の目的のためだけのチームワークであって、それ以外の事象に対しては全く役立たないチームワークであることでしょう。

    弱者排除の管理は、一定の目的のために最大限効率化された手法だけに、それ以外の事象への対応は恐ろしく弱いのではないかと思います。

    また、組織へのロイヤリティという観点でみると、弱者排除の管理で作られた組織では、構成員の、組織へのロイヤリティというのは低いものになりがちなのではと考えますがいかがでしょうか。

    1.  太田さん、大変鋭い質問ですね。良いところ突かれています。妬みや、強弱間の対立は必ず出てくるし、足を引っ張ったり、潰し合いなどなど、まさにご指摘の通りです。もちろんこのような負の側面を想定して制度を組み、組織を作り上げていきます。対策もたくさんあります。残念ながら、それは私の商売の秘密なのでここで開示するわけにはいきません。ごめんなさい。

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