【緊急リスク情報】天津爆発による化学物質の飛散・雨水汚染リスクから身を守ろう

 天津大爆発の後続リスク。有毒有害化学物質の飛散や雨水による拡散、二次被害や三次被害につながる後続リスクについて、日本当局からほとんど迅速かつ適格な情報が確認されていない。現地在住邦人の身の安全、健康への影響、リスク管理はどうなっているのか。

 天津大爆発を受け、北京の日本大使館が中国当局発表の情報をそのまま転載して通達した(以下3参照)が、実務的なガイドラインたる注意事項になっていない。さらに、某日本人会関係者がFB上で、「取り敢えず心配いらない」との発言もあった。極めて軽率な言論だと思う。果たしていまは、「心配いらない状態」といえるのだろうか。少なくとも「注意喚起」ではないだろうか。

1.グリーンピースの発表(http://energydesk.greenpeace.org/2015/08/13/tianjin-latest-chinese-chemical-plant-explosion-risks-massive-health-impacts/

 国際環境NGOグリーンピースの発表。要点を次にまとめる――。

 (1) 現時一連のデータはいずれも当局が発表したもので、信憑性等未検証の部分も多い。
 (2) 降雨による有毒有害化学物質汚染の拡散リスクがある。
 (3) 給水系統や生態系への影響、そして化学物質が爆発の燃焼によって燃えきったかどうかも確認されていない。

2.在北京米国大使館発と思われる情報

 一部の情報ソースでは、「在北京米国大使館から警告を発せられた」と報じられ、その英語原文を以下転載し、和訳要点も併載する。(米大使館の公式発表は確認されていないが、リスク管理面では、その内容は日本大使館発のものよりもはるかに実務に則し的確かつ有益と思われるため、転載する)

 (1) とにかく、雨に濡れないように、雨が肌に触れないようにすること。
 (2) 雨が衣服に付着した場合、ただちにそれを洗い落とし、人間はシャワーを浴びること。
 (3) ペットを降雨区域に絶対に入らせないこと。雨に濡れた地面に接触させないこと。それができなかったとき、直ちにペットを洗浄すること。
 (4) 雨水に接触したあと、必ず傘を徹底的に洗浄すること。
 (5) 天津爆発の完全なる消火が確認されてから10日間のあいだ、上記を厳守すること。

From American embassy
For your information and consideration for action. First rain expected today or tonight. Avoid ALL contact with skin. If on clothing, remove and wash as soon as possible, and also shower yourself. Avoid pets coming into contact with rains, or wet ground, and wash them immediately if they do. Rinse umbrellas thoroughly in your bath or shower once inside, following contact with rain. Exercise caution for any rains until all fires in Tianjin are extinguished and for the period 10 days following. These steps are for you to be as safe as possible, since we are not completely sure what might be in the air. Remember the brave firefighters and their families, along with all those suffering from the accident in Tianjin. Stand strong together China!

3.在北京日本大使館の通達

天津市濱海新区における爆発事故による環境影響について(お知らせ) 
2015年8月14日 在中国日本国大使館

 天津市濱海新区の危険化学品倉庫にて8月12日深夜に発生した火災・爆発事故について、中国環境当局が発表した環境影響に関する情報を下記の通りお知らせします。
 ○事故発生後、西南風が続くことから大気汚染物質は渤海方面に拡散しており、天津市中心部や北京への環境影響のおそれはない。
 ○事故現場の風下における大気監測の結果、トルエンやVOCsにつき基準超過が見られた(※)が、緩やかな下降傾向にある。
 ○事故現場周辺の5地点の大気環境モニタリングステーションにおいては、6つの汚染物質について影響が見られていない(PM2.5、PM10、一酸化炭素、二酸化硫黄、二酸化炭素、オゾン)。
 ○水環境汚染について、事故発生後に事故現場における海洋への排水口は全て封鎖しており、水環境への影響はない。排水口内の水を検査した結果、基準を上回るシアン化合物等が検出されたが、当該汚染水は汚水処理場での処理が想定されている。
 ※ 13日朝5:30時点で、トルエン3.7ミリグラム/m3(中国の大気汚染物質総合排出基準では排出濃度限界値は2.4ミリグラム/m3)、VOCs(揮発性有機化合物)は5.7ミリグラム/m3(中国の工業企業VOCs排出基準では排出濃度限界値は2.0ミリグラム/m3)。

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コメント: 【緊急リスク情報】天津爆発による化学物質の飛散・雨水汚染リスクから身を守ろう

  1. 誤解させたみたいで申し訳ありません。立花先生に言ったわけではなく、「在北京米国大使館発と思われる情報」の内容にコメントしただけなので。

    英文を読むと、今日、明日の雨と書かれていますから、二日ぐらいならマンションにこもってろというのもさほど非現実的なではないと思います。

    私としては、成分表を載せている日本大使館の内容のほうが各企業の判断の助けになるとは思いますが。

    1.  私は米国大使館の実務的なアドバイスが日本大使館の中国官制情報の転載より遥かに実用性が高いと思います。日本大使館が提示した成分表に網羅されていないリスク基準は?基準値の動態的な変化のモニタリングは?・・・。そこですよ。河野さんが日本大使館や日本人会等組織の方であっても、私は面と向かって同じことを申し上げます。

      1. どちらの指示が受け入れやすいかは人によると思うので、特に反論はありません。

        日本企業の大半は根拠が明示されていない指示では動きにくいとは思いますが・・・。

        1.  そうなんです。根拠。その通りです。肝心な真実の根拠、正しい結論・判断を裏付けるような的確な根拠をどう入手するかです。おっしゃる「日本企業の大半は根拠が明示されていない指示では動きにくい」ということは事実です。それ自体は間違っていません。問題はその根拠の真実性と、結論を導き出す論理的なアプローチです。少なくとも中国の官制情報を鵜呑みするような根拠をまず、リスク管理上の根拠と見るべきかどうか、その辺で人間や企業の生きる力が分かれてきます。最後に一言、サバイバルというのは、ときには根拠なき判断もせざるをえないものです。それは生きる力です。

           

  2. (1) とにかく、雨に濡れないように、雨が肌に触れないようにすること。
    (2) 雨が衣服に付着した場合、ただちにそれを洗い落とし、人間はシャワーを浴びること。

    正しいかもしれないけれど、国がお金を出してくれている機関でもなければ実行できないレベルの要求を告知するのは、言っていないのと同じで、むしろ無責任のような気もしますね。(それとも、最大限の安全対策を言っておくことでの責任回避ですかね。誰も実行できないから、責任をとる必要がないと)。

    スーパー付の高級マンションで、マンションから一歩も出ないぐらいしか実行方法が思いつかない・・・。そのスーパーに運び込まれてくる野菜や果物や肉はどうなのかはさておいても。

    1.  言わないと、告知義務を果たさないのが無責任。言うと、実際にできないのも無責任。河野さんが公務員だったら、言うのか言わないのか。では、立花がここで情報を伝えても河野さんを助けることができないのも無責任になりませんか。そして、これが最大限の安全対策ですか、全然違いますよ。スーパー付きの高級マンションだって、スーパーで売っている食品は雨水汚染を受けていない保障はありますか。リスク管理とは最大限などなしです。自分の価値観と能力でどこまでやるかを判断する、自己責任の世界です。実施不能で無責任なリスク情報だと思ったら、無視すればよろしい。自己防衛の責任を他者になすりつけることこそ最大な無責任だ。たとえ政府や大使館が無責任であったとしても、損するのは自分ですよ。私はそう思います。

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