いきなりロマンチックとベスコレ、音楽の酔い方色々

 日曜日、午後はクアラルンプール中心部のKLCCツインタワーホールでコンサート鑑賞。メインはラフマニノフの交響曲第2番。

 この交響曲第2番といえば、日本人にお馴染みの第3楽章をまず想起する。美しい緩徐楽章である。ヴィオラとクラリネットが交代で流れるような優美な旋律を作り出し、さらに中間部では序奏に出たヴァイオリンのモチーフが躍り出、さらにホルンやオーボエのソロがそれを変容させ、弦と管の完璧なハーモニーでいよいよクライマックスを迎える。

 ただこの第3楽章以外の楽章は、あまりにも知られていない。ラフマニノフの第2番は全体の演奏時間が1時間近くという長~い交響曲である。いや、人によっては冗長と思われたりするのかもしれない。お馴染みの第3楽章に比べれると全体的な冗長さが目立ってしまうという考え方もあるだろうから、日本国内のコンサートではしばしば第3楽章だけ演奏するというパターンが多い。

 だが、それはもったいないと私は思っている。この交響曲はいかにもロシアらしく、ドラマティックな連続体として構成されている。よくよく聞くと、連続的なストーリー性が秘められていることがわかる。

 第1楽章は繰り返しが多くやや執拗な感じもするが、長い求愛のプロセスの描写と思えばむしろ自然に受け入れていくのであろう。第2楽章は盛り上げを見せ、最後に静かに楽章を閉じた後、そこで幕開けとなる第3楽章が美しい、ロマンチックの世界を繰り広げてくれるのである。

 冗長な他章をカットしての第3楽章演奏は、ベストコレクション的な効率性と、いきなりのロマンチックという唐突さの対立を抱え込む。これは今回全編鑑賞してはじめて得た認識である。モチーフの単体だけでなく、旋律の絶えざる美しい流れ、ストーリー的な展開を楽しんだ後の余韻、それに酔い痴れる悦びはやはり「一気飲み」では得られないものだ。

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