無罪判決は評価ならぬ、民主主義の基本的価値観を確認せよ

 無罪判決は当然である。日本は韓国の恩恵に預かったわけでも何でもない――。

 韓国の朴槿恵大統領の名誉毀損で起訴された産経新聞前ソウル支局長に対し、韓国の裁判所は昨日無罪判決を言い渡した。これを受け、安倍総理は「無罪判決を評価する」、岸田外相は「日韓関係の推進への良い影響を期待する」といった趣旨のコメントを発表した。

 安倍総理や岸田外相の談話がいずれも極めて不適だと考える。正当な司法判決が二国間外交関係にプラス影響を与える事態になれば、次から次へと不当な提訴や拘束を誘発しかねない。司法そのものが外交や国益取引に使われるカードになる、これは断じてあってはならないことだ。しかも、検察側の控訴の有無が確認できない現在、このような談話発表は軽率すぎる。

 三権分立を不動なる基盤とする民主主義国家では、結果の良し悪しに関わらず、司法が独立を失いいわゆる民意の影響や行政の干渉を受け翻弄される事態は極めて深刻である。さらに言論の自由という、これも民主主義国家の根幹となるものを脅かす事件を国家元首たる大統領がトップダウンで引き起こしながらも、本人が終始沈黙で押し通す事態、これはもはや程度が深刻を超え、悪質とさえいえる。

 外交辞令であっても、この辺の事情を考え、厳正な立場を表明する必要があるだろう。私が総理だったら、以下の談話を発表する。

 「追訴と長い期間の出国禁止が我が国の一国民の人身自由を制限する重大な事態であり、極めて遺憾に思います。最終的な無罪判決は当然のことでありながら、それが一連の経過措置の恣意性や不当性をなお一層浮き彫りにするものであり、民主主義国家として司法の厳粛性、言論の自由への保障など基本的価値観の基盤を今一度確認し、今後は二度とこのようなことなきよう注意を払ってほしい」

タグ:

コメント: 無罪判決は評価ならぬ、民主主義の基本的価値観を確認せよ

水木保志 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です。