コンサルタントを信用するな!

 「立花さんは中国で長くビジネスをされていますが、中国市場が難しいとかリスクとか、歯に衣着せぬ物言いをする辛口で、顧客としては有り難いのですが、ご自身の商売に悪影響が出ませんか」(ちなみに私はベトナムでも同じことを言っている)

 数か月前に、ある日本企業経営者に聞かれた。そうした質問をされたのは初めてではない。経営コンサルタントの職業柄、中国の問題点をばかり言っていたら、日本企業は進出しない方がよくなるのか。その通りだ。進出に適していない企業は進出しない方がいいに決まっているだろう。

 自分の商売のために、進出すべきではない企業に進出してもらうのが職業倫理に反しないか?いわゆる中国ビジネスコンサルタントのなかに、中国の問題点に一切触れない人がいる。名指しは避けるが、何人も知っている。何年前から、某氏とこの問題で論戦を繰り広げたこともあった。

 最近、米中貿易や香港騒動、中国にかかわる問題が山積なのに、まったく触れようとしない中国関係のコンサルタントも散見される。触れないのはまだしも、「あれは一時的な問題だ」「大きな市場は存在している」などといった基調の人となると、「一時的な問題」やら「大きな市場」やらその根拠とは何か、論理的に説明できなければ、逆に自分の信用を落としてしまうのではないか。

 情勢は厳しいけれど、それはすなわちすべての日本企業が中国(香港を含む)から根こそぎ撤退したほうがいいと言っているわけではない。撤退か残留か、所与の条件や自身の状況を緻密に検証したうえで導き出す結論である。「中国はまだまだ大丈夫だ」と一般論的に誤魔化すものではない。

 「某国ビジネスコンサルタント」という肩書は、私個人的には嫌いだ。経営やビジネスは哲学ベースで考えれば、極めて共通性の高い学問であり、実務である。つまり、「属地」であるべきではない。これは、多くの企業と同じように、グローバルベースの俯瞰的視野で捉える能力を持たない人間は、経営者にもコンサルタントにもなり得ないのである。

 「基本的に、コンサルタントを信用するな」と、私が言うと、またもや驚かれる。私自身の職業も確かにコンサルタントではあるが、コンサルタントの基本的な仕事は、顧客企業の経営者に、物事を懐疑的に捉えるように誘導することだ。もちろんコンサルタント自身も懐疑の対象となるべきだ。

 コンサルタントから言われたことを疑い、質問(反問)を仕掛け、議論を交わし、結論を導き出す。この段階を超えた経営者はもう、コンサルタントなんか要らない。コンサルタントが目指すべき究極の境地は、「コンサルタントを不要とする顧客」である。

 では、コンサルタントはどうやって糧を得るのか。良い質問だ。ただ、それはコンサルタントが自問自答することである。

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コメント: コンサルタントを信用するな!

  1. おはよう御座います。
    突然コメントをお送りしますが、宜しくお願いします。
    御社はコンサルタントもなされと理解しておりますが、
    弊社は自動車金型メーかーですが、業務的に繋がりそうでしょうか。
    希望としては、日本向け金型輸出です。
    宜しくお願いします。
    宜しくお願いします。

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