脱中国(1)~日本人は餓死しても、台湾を守り抜く決心があるのか?

 日本人は餓死しても、台湾を守り抜く決心があるのか?結論からいえば、「ない」。しかも、「ない」であるべきだ。

 私がかねてより繰り返してきたように、「台湾有事は日本有事」と唱えながら、年間防衛予算2倍増とするのはいいが、前提となる経済の議論は、ことごとく抜け落ちている。

 記事『優秀な大学生でも「台湾有事の意味がわからない」 日本人が決定的に欠如する危機意識とは?』(2022年12月15日付AERA)から提起された経済的課題を列挙すると、以下になる。

 ● 台湾有事・派兵の議論よりもまず経済制裁だが、日本では、対中経済制裁の議論はされていない。戦争になれば、米国主導の対中経済制裁が必ず発動され、日本だけが参加しないことは考えられないからだ。

 ● 経済制裁云々以前の問題だが、経済デカップリング(脱中国依存)の議論さら進んでいない。(立花コメント:突き詰めたところ、日本国内の末端消費者は、中国以外のサプライチェーンの再建にかかるコストを負担したくないからだ)

 ● 中国は日本の最大の貿易相手国で、全貿易額の約23%(2021年)が対中貿易である。中国への経済制裁などありえない。日本で対中貿易が断絶したら餓死者が出る。日本に住む人たちが生活の苦境に陥る。 (立花コメント:結局、経済的課題だ)

 日本では、このあたりの議論はまったく見られない。しかし、中国はこれらの課題をしっかり分析しているだろう。いや、分析の必要もないだろう。日本は議論すらできないところを見れば、ほくそ笑んでいればいい。

 「日本はそもそも戦争できるのか」。威勢の良い保守の人にこの問題を提示した時点で、すぐに話題を変えて逃げる。議論すらできない証拠だ。戦争は結局経済だ。経済が続かなければ、どんな武器を持っても、戦争に負ける。

 太平洋戦争のとき、玉砕覚悟があって少なくとも玉砕の「空気」くらいは漂っていたが、今は何もない。しかも、他国の台湾のために日本国民が犠牲になっていいのか。地震災害の義援金程度で済まないのだ。

 私がこの類の議論を持ち出すと、「中国による日台関係の離間策に利用されるな!」と叱られたりもするが、離間策すら必要ない。放っておけば、日台が離れていくことは目に見えている。台湾国内でも分断が起きるくらいだから。

 私は実務家で、仕事柄、まず課題のすべてをテーブルに並べて議論する。議論できないとは、まず認知バイアスがかかっていると見ていい。話にはならないのだ。

 日本政府は、日本人をもう騙さないでほしい。それから、台湾人にも過剰な期待を持たせないでほしい。無理、日本は戦争などできっこない。コロナのロックダウンすら耐えられないのだから、戦争は無理。

 戦争シナリオを描く勇気すらない国家は、戦争に勝てるはずがない。負けてしかるべきだ。史上二度目の降伏だけはやめたほうがいい。みっともないから。

【補筆】

 本稿をフェイスブックに投稿したら、批判のコメントが寄せられた――。

 「立花さん、あなたは中国で仕事をするために、そういう(中国の肩をもつような)ことを言っているんでしょう」

 私はそう言われたことは一度や二度ではない。

 百歩千歩譲って、そうだとしよう。私だけでなく、私の顧客である多くの在中日系企業は、なぜ、中国で仕事をしている(供給)のだろうか。それは日本国内に日本人消費者(需要)がいるからだろう。

 需要があっての供給、資本主義の基本的な原理だろう。そもそも日本人が日本国内の工場で働きたくないから、そもそも日本人消費者がもっと安い商品を必要とするから、日本企業が中国に移転したのだろう。

 根は、日本国内の末端消費者にあるのだ。この問題を棚上げしても消えない。だいたい、この類の問答が続くと、相手が逃げ出すのだ。

 問題から逃げ出すのが、日本、日本人の最大の問題。まさに本稿で取り上げた「議論しない」「議論から逃げる」問題なのだ。

<次回>

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