「サイゴン川」というテーマ、ホーチミンで食の今昔物語

 4月17日(月)、ベトナム出張。今回は、ちょっとしたテーマを持った旅である――サイゴン川。ゆっくりと流れるサイゴン川を眺め、思いを馳せたい。

ル・メリディアン・サイゴンの客室から望むサイゴン川

 ホーチミン市内では、ル・メリディアン・サイゴン(Le Méridien Saigon)のリバービュー・ルームに宿泊する。眼下に流れるサイゴン川をみると、濁流までいかなくとも、決して清流とはいえない。しかし、この「ドロドロ感」だからベトナム色満点なのだ。

 サイゴンという街は解放(陥落)後に、ホーチミン市に名を改められた。しかし、あちこちに「サイゴン」の名称がそのまま残っている。当局が決して意図的に歴史の面影を打ち消そうとしない。サイゴン川もその1つ。私が泊まるホテルも「サイゴン」の名がついているし、ホーチミン空港のコードも「SGN」のままになっている。

ベトナム料理店「Quan Bui」

 もともと、滞在中にフランス料理を食べる予定だったが、なぜか気分が乗らず、結局ベトナム料理に予定変更。ホテルの近くにある「Quan Bui(クアンブイ)」というベトナム料理店に予約を入れたのは、食の今昔物語にこだわりがあったからだ。このレストランは初めてではない。

 「Quan Bui」の古い本店へ足を運んだのは、6年前の2017年(参考記事:『Quan Bui、素朴な家庭料理と米酒が最高』)。ここから100mも離れていない場所には元祖の本店があった。今でも同じようなメニューで経営しているが、看板の中身だけがだいぶ変わった。

 「店内はいたって素朴な雰囲気で、地味なカフェというか居酒屋という感じ」。――6年前に書いた記事のこのくだりだが、少なくとも目の前にあるこの新店舗のイメージがすっかり変わった。数段も洗練された雰囲気が漂い、料理も食器も垢抜けているし、サービススタッフも全員英語が流暢で、外人慣れしている。

 「Quan Bui」はすでに支店を何店舗も展開し、ビジネスで大成功を収めたのだった。経済の発展は清流も濁流もなくただただ時代の流れを感じさせ、時には鮮烈なコントラストをなし、衝撃だったりもする。

<次回>

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