韓国雑草の旅(3)~「雑に食え」がすべてだった束草中央市場、カニと焼酎の暴力

<前回>

 今日こそハシゴを実現し、前日の敗北をリベンジする。そう決めていた。昼のムルフェは単品で抑え、12時前に切り上げた。刺身の冷スープだけに、胃袋から消えるのも早い。ホテルで少し休み、夕方5時台に再出撃。今回は束草中央市場まで徒歩移動である。食うために歩く。実に雑な動機だ。

● 「高級ガニ」ではない――漁師町の雑なカニ

 第3ラウンドは、束草中央市場の「대게특별시」、直訳すると「カニ特別市」。名前からして雑だ。メニューは実質カニ一本勝負。余計な観光演出はない。1kgあたり5万ウォン。2人で1.2kg級のズワイガニを選ぶ。

 漁師系の店だけに、アルコールを売っていない。しかし誰も困っていない。客は黙って近所のコンビニへ行き、焼酎を買って戻ってくる。店も当然のように受け入れる。日本なら持ち込み料だのルールだのと面倒になるが、ここは違う。「飲みたいなら勝手に買ってこい」。それだけだ。雑である。清々しいほど雑だ。

 さらに面白かったのは、コンビニで買ったのが、緑瓶の安焼酎ではなく、カニ料理に合う高級焼酎「Hwayo(화요)」の最上位ボトル。しかし、市場の店に持ち込んでみると、グラスすら置いておらず、それを紙コップに注いで飲む。高級焼酎と紙コップ。このコントラストには、少々絶句した。日本なら、高級酒には高級酒なりの器、空間、演出を求める。しかし韓国東海岸は違う。「旨ければいい」で全部押し切る。

 雑というより、もはや価値観の優先順位が違うのである。

 やがて大鍋で茹で上げられたズワイガニが登場する。日本の高級旅館のカニ料理とは、完全に世界が違う。日本のカニは「静けさ」がある。繊細に包丁を入れ、美しく整え、「品よく食べる」方向へ持っていく。しかしここは違う。店員がハサミでバキバキ切る。殻が飛ぶ。汁が垂れる。手が汚れる。解体が恐ろしく雑だ。

 だが、その雑さが妙に旨そうなのだ。「高級食材をありがたく頂く」のではない。「海の獲物をその場で食い尽くす」感覚に近い。そして甲羅である。日本なら甲羅酒にでも使うところを、韓国はそこへカニ味噌とご飯をぶち込み、ごま油と海苔を加えて豪快に混ぜる。カニ炊き込み飯、完成。繊細な味の分離など最初から考えていない。「旨いもの同士だから旨いだろ」で押してくる。雑の極致だ。

 実際、旨い。悔しいほど旨い。

● 「まだ入る」――終わらないハシゴ

 そして、この日は前日と違った。まだ胃袋に余裕があったのである。勝った。私は勝ったのだ。勢いに乗り、そのまま中央市場を徘徊する。第4ラウンドは、市場の店でイカ刺身。韓国東海岸のイカは、透明感より「歯応え」で殴ってくる。コリコリではない。もはや「噛み切る」という感覚に近い。これも雑だ。

 さらに、第5ラウンド。締めは、海鮮チゲ鍋のような店だった。ここまで来ると、完全に胃袋の方向性がおかしい。昼はムルフェ、夜はカニ、そのあとイカ刺身、最後にまた熱い海鮮鍋である。しかし、その頃には、完全に酔っていた。焼酎が回り、胃袋も頭も雑になっていた。そして気づけば、写真を一枚も撮っていなかった。つまり、理性が完全に敗北していたのである。

 ただ、ぼんやり覚えている。真っ赤なスープ。魚介の匂い。汗。湯気。そして、「もう無理だ」と思いながら、またスープを飲んでいた自分である。韓国東海岸では、「締め」という概念そのものが雑なのだろう。普通なら、軽く終える。しかし彼らは違う。最後まで全力で殴ってくる。冷たい海鮮で始まり、最後は熱い海鮮で終わる。しかも、全部辛い。全部雑。

 だが、それが異様に旨い。韓国東海岸の夜は、途中から「記録する旅」ではなく、「流される旅」に変わる。雑に食い、雑に飲み、雑に歩き、最後は記憶まで雑になる。それこそが、この土地の海だった。

<次回>

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