廃棄エアコンからレアアースを、環境先進国の美しいバケツリレー

 中国によるレアアースの輸出規制が強化される中、家庭用のエアコンからレアアースをリサイクルする取り組みが、国内で初めて始まった。まず回収した室外機からコンプレッサーを抜き出して分解する。そこから、ネオジムなどレアアースを含む磁石を取り出して精製し、製品に再利用する。

 我が国の「ものづくり精神」が生んだ、実に涙ぐましいエコ活動がある。街の電気屋やリサイクル業者が汗水垂らし、古いエアコンから「自給率35%」のレアアースをせっせとすくい上げる美しいバケツリレーだ。目指すは「脱・中国依存」。経済安全保障という大義名分を背負い、技術者たちは今日もリサイクル網の構築に知恵を絞っている。

 しかし、ふと振り返ると、彼らが必死にすくい上げているプールの水門は、これ以上ないほど全開になっていた。

 世界的な「省エネ規制」の強化という正義の波に乗り、最新のエアコンは昔より大量のレアアースを要求する。1台あたりの必要量が跳ね上がり、プールはバケツの給水速度をはるかに超えて巨大化していく。おまけに、脱炭素の主役である電気自動車(EV)たちも「そのレアアースをこっちにもよこせ」と、横から大きなストローでプールの水を吸い上げている。

 がんばって報じられているように35%を自給したところで、海外(主に中国)から買わねばならない「残りの65%」の絶対量は、減るどころか増える一方だ。そしてこのドタバタ劇に、最高に皮肉なトドメを刺すのが、他ならぬ我々「賢い消費者」である。

 「エコで国産、でもお高いエアコン」と、「レアアースをふんだんに使い、安くてキンキンに冷える中国製エアコン」。家電量販店で両者を並べられた消費者は、環境への配慮を1秒で忘れ、合理的に中国製をカゴに入れる。

 日本メーカーがコストをかけて「脱・中国」のリサイクル網を磨けば磨くほど、製品価格が上がってシェアを失い、市場全体の中国依存度が上がっていく。これぞ現代の「資源の永久機関(ただし、儲かるのは中国だけ)」である。

 今日も日本のどこかで、汗を流してレアアースを回収する技術者がいる。その横を、格安の中国製エアコンが「お疲れ様です」と言わんばかりに涼しい顔で通り過ぎていく。

 私たちは今、非常に高度で、非常に無駄なバケツリレーを目撃しているのかもしれない。

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