中国大卒の受入れ初任給2645元、高物価対比の均衡失調際立つ

 新華社発表の最新データ――。

 大学新卒者が期待する平均初任給は3700元(以下いずれも月給)、中に2000元~3500元が68.2%を占める。そして、受け入れ可能な平均初任給は2645元、なんと受け入れ可能初任給の最低額が1000元、多くの地方の法定最低賃金を下回っているのである。

 大学が林立する中国、供給と需要の量的バランスが崩れている一方、企業が求める人材像とのミスマッチという質的均衡の不在が際立つ。現場労働蔑視、管理職迷信という中国文化の伝統的価値観が存続する限り、ブルーとホワイトの賃金逆転が拡大する一方であろう。

 新卒生の思考回路の硬直化、課題抽出や問題解決などの実務能力の不在、一向に改善されていない。私が繰り返しているように、中国の基礎体力的な、中核競争力はいまでも変わらず、労働集約型産業である。

 中国の経済発展を見てもわかるように、いつまでも、不動産やインフラがけん引している。知的創出による付加価値の積み上げは全般的欠如している。これが長期的持続可能な経済成長には致命傷である。

 数字を見るだけで容易に理解できる。大卒の初任給がいまの円安でも、せいぜい月給5万~6万円。が、上海あたりの生活水準はもうとっくに東京と肩を並べているのだ。そのアンバランスはまさに中国経済や社会の歪みを如実に反映している。楽観できるものではない。

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コメント: 中国大卒の受入れ初任給2645元、高物価対比の均衡失調際立つ

  1. 異なる目線ということでもう一つ。

    中国社会の安定を図るに当たって、果たして大卒の動きが重要かどうか?確かに知識分子としてもてはやされた時期もありましたが、現在は大卒人口が増えすぎてむしろその価値が下がってしまったと言えます。 

    また、日本より一層現実に立ち向かう力が要求されるのが中国社会です。その点、中国の大卒というのは、非常に弱い。むしろ大卒ではない低学歴の人口(低所得とは限らない)のほうが、社会に与える影響が大きく、社会の安定性の目安において重要なのではないかというのが私の意見です。

    1. 山岡さん、実務力の要請に対する大卒の脆弱さと総体価値の低下が深刻な問題で、これについて同感で同じ目線です。さらに広義的雇用吸収力の低下という社会問題、そこでいわゆるエリート候補層を加味すると、また異なるダメージを誘発するリスクを孕んでいます。

  2. 「長期的持続可能な経済成長には致命傷である」。立場先生のお言葉、ごもっともかと思います。

    しかし、一方で、生活の安定性についていうと中国には日本にはない粘り強さがあるように見えます。

    下部の労働者を吸収可能な仕事がたくさんあります。違法だ、違法だと言われながらも露店はたくさん。私が住んでいるアパートの周辺ではここ数年で、朝食専門の露店が3,4倍に増えました。

    バイタクは滅多に見かけなくなりましたが、電機自転車タクシーがその数を補っています。

    内職を提供するところも以前よりも増えました。これも労働力の吸収に一役買っていることでしょう。

    アパレル系のお店は不振のようですが、飲食系がそれを補っています。近年続いていた食の多様化が低所得者向けの食堂にまで及んできています。

    (アパレル系のお店は確かに不振店が多いように見えますが、これは経済の問題というより、ネットショップの利用者が増えたことの影響のほうが大きそうです)。

    深圳の話になりますが、政府は(以前にはなかった)出稼ぎ族の優遇政策を打ち出しており、現在多くの出稼ぎ族が都市戸籍を容易に得られるようになっており、都市戸籍を得られると同時に子供の教育費が無料になるなどの恩恵を受けています。

    大卒の就職は確かに困難ですが、テレビ等でドキュメンタリーを放映し、ブルカラーの仕事でも大学で勉強したことは無駄にならないとアピールしたりしているのを見かけます。大卒=無職ではなく、ブルカラーの仕事に就くことさえできれば、経済の不安定化にはつながりません。(大学生が売る「安心油条件」、大学生が売る「豚肉」、大学生が売る「ヒマワリの種」等、大学生ブランドを生かした起業や家業の受け継ぎが積極的に宣伝されています)。考えてみれば、今の日本だって、大卒でブルカラーやっている人がたくさんいますね。

    また、ネットが普及したため、費用ゼロ娯楽が増えたのも社会の安定に役立っているように思います。以前はDVDを購入しなければ(それだって海賊版だから安かったのですが)みられなかった映画やアニメがネットではただ同然で手に入ります。

    中国の不安定要因は多いですが、日本にはない安定要因もたくさんあります。崩れそうで崩れないのが中国の強さのように思えます。

    1. 山岡さん、異なる目線でのコメントありがとうございます。また日本とは政治、国家枠組み的な異質性から本稿では比較対象としません。

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