朝日新聞クライシス(2)~失格弁護士と失格メディア

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 朝日新聞社はなぜ、このようなピンチを招来したのか。それは、主に同社の情報の取り扱いスタンスに起因する。

 弁護士とメディアは、情報や事実を根拠に主張するところでは似ているが、本質的な違いがある。

 弁護士は、自分のクライアントに不利な事実を無視、切り捨て、有利な事実だけを取り上げて主張するのが仕事であるが、メディアはそうはいかない。メディアは公器である以上、特定の当事者の私利ではなく、社会的公益を念頭に常におかなければならない。その本質的な相違を、朝日新聞はどうやら混同していて、弁護士のような情報の取り扱い方をしているように思える。

 そこで、弁護士がいくらクライアントのために戦うといっても、いくら有利な事実だけを集めるにしても、一つだけ、事実を捻じ曲げることはできない。ねつ造や虚構をやったら、事実の真相が露呈した時点で、敗訴する。

 さらに、有利な事実ばかり見て、不利な事実に目を覆うと、いろんな事実の相互関係や整合性、ひいていえば論理性を見落としてしまう。論理性を失うと、大義名分を担ぎ出し、「平和」や「友好」などなど一見あたかも正義であるかのように見えても、知らないうちにプロパガンダのツールに転用され、さらに酷いことに読者の批判的思考を根こそぎ奪い去ることになろう。

 弁護士の場合、原告と被告の両方についているので、傍観者(傍聴者)はある程度その双方の対立した立場を客観的に見ることができるのだが、新聞になると対立立場の二紙以上を購読しない限り、なかなか難しい。そこで特定の新聞の独善的な主張が世間で通ってしまうという恐ろしい事態が生まれるのである。

 朝日新聞社は、新聞社として落第だが、たとえ弁護士としてでも失格である。いや、確信犯的な要素が存在すれば、それは間違いなく罪になる。ついにツケが回ってきた!

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