留学先の華東法政大学から連絡があって、私は、中国政府留学生奨学金をいただくことになったと告げられました。40代の留学生として、政府奨学金をいただくのが、嬉しいのか恥ずかしいのか、身に余る光栄です。とにかく、この際我が身を振り返ってみようと思いました。
私は、今、華東法政大学の法学博士課程で留学しています。「博士」というと、何だか偉そうな感じがしますが、そんなことはまったくありません。
「博士」というのは、日本語で、「はかせ」とも「はくし」とも呼べますが、正しい学名は、「はくし」だそうです。「はくし」といえば、「白紙」を連想しますが、「博士」を「白紙」に置き換えてもよい、むしろ置き換えた方がよいと私が思います。
「博士」とは、「博学」という意味もありますが、もっと重要なことは博学ではなく、「白紙」なのだと私が思います。
私が2007年に中欧国際工商学院、いわゆる中国一のビジネススクールで、MBA(経営学修士)を卒業しました。卒業式に先立って、ある有名な先生がこう言いました。「いままで、君たち、いろんな科目を勉強したが、いざ今卒業になって考えると、おそらく勉強したものの十分の一でも覚えていればよい方だ。それはそれでかまわない。たった一つ、ものの考え方、入学時に比べるとものの考え方は変わっていないか?自分の中で、この考え方の変化で、様々な変化を感じていないか?」
私は、深く感銘を受けました。ものの考え方を変える前提は、既成概念を追い払うことです。青春期を過ぎ、成人になると、いろんな経験や知識を蓄えます。このような経験や知識は、大きな大きなパワーを持って、われわれの人生、仕事ないし在職中の会社にとって、大きな大きな財産です。一方、この大きなパワーがマイナスに作動した場合、大きな大きな損害を自分や会社に与えることになってしまいます。
「自分の一番の敵は、自分自身だ」というのは、まさにそれなのです。
自分が持つ過去の経験や知識を否定するのは、最大な自己否定です。人間にとって、自己否定ほど難しいことはありません。自分の頭の中を空白にし、「白紙」にすることができるかどうかは、次なる大きな一歩を踏み出せるかどうかに係わる最重要なことです。
ですから、新しいものを作り出さなければならない「博士」にとって、「白紙」回帰は何よりも重要です。
皆さんと一緒に、毎日、自分の頭を「白紙状態」にしましょう。