30万元と2万元の相見積もり、方法論の低次元

 金曜日と土曜日の夜、二人の方と上海で会った。

 一人は、韓国政府傘下経済団体の方(英語で対話)で、私とほぼ同年代。もう一人は、台湾に長く住んだ中小企業の日本人オーナー、60代の紳士。この二人の方との会話で、まったく異なる角度からある共通の焦点に迫った。その焦点とは、コンサルタントと顧客企業の認識上の食い違いである。これまで私が痛感していたあのアンタッチャブルな部分だった。

 コンサルタントは問題解決が仕事だが、そこで肝心の企業は、いったい、問題解決を望んでいるか?

 多くの企業は、常に方法論を求め続けている。「立花さん、Aについて、どうすれば良いのか」と聞かれることが非常に多い。でも、私がコンサルタントとしてもっと関心を持っているのは、なぜ、Aをしなければならないのかということだ。そこで、「B という目標を達成するために、Aをしたいのだ」という答えが返ってくれば良いのだが、最近そのような回答がめっきり減っている。「B という目標を達成するために、Aをしたいのだ」と言われれば、私は、原点に戻って「B という目標を達成するために、Aは果たしてベストか」を考える余地ができるのだ。しかし、Bを提示されることがない。すると、「AのためのA」という方法論に首を突っ込むことになって、きわめて次元の低い世界になる。

 Bという目標を提示してくれれば、AやCの方法論の議論だけではない。もしかすると、DやEの方法論も出てくる。

 最近の話だが、P社の人事制度に数多くの違法点を指摘し、P社の総経理と副総経理に、私がコンサルティングの提案をした。30万元というコンサルティングフィーも合わせて提示した。そこで、その総経理は、他のコンサルティング会社から2万元の提案があると当社を一蹴しようとした。私は、「ちょっと待って」といった。まず、話を聞いてくださいよと。30万元のコンサルティングで、それは違法点の解消だけでなく、もし1年後や2年後に数百万元ないし数千万元以上の価値が生まれたとすれば、30 万元など安いではないか。他のコンサルティング会社の2万元で、どのくらいの効果が生まれるか、共同提案会議でも開こうではないかと提案した。テーブルの上に各社の案を広げて、議論し、2社の発表を見て、P社の最終判断と決定を仰げばよいと。

 しかし、その総経理は、共同提案会議さえ同意しないようだ。沈黙権行使で、私のメールには、何ら回答も来ない。問いかけたいのは、一つ。その総経理は、会社利益の最大化を考えているのか?私がもし、その会社の株をもっていたら、株主総会で質問を提起せずにいられない。