民主主義の失敗作、フィリピン

 8月29日、私は香港セミナー会場に向かう途中で、通りかかった香港市民の無言デモに、一部参加した。

 8月23日、フィリピン・マニラ市で起きたバスジャック事件で、8人の香港人ツアー客は、命を奪われた。事件に当たって、フィリピン警察の無能や不手際、そしてフィリピン当局の不謹慎な態度に、香港市民は怒りを爆発させた。

43114_2香港市民デモ(8月29日午後、香港銅鑼灣)

 29日の無言デモには、8万人の香港市民が参加した。元香港市民として、私も、無言のメッセージを腐敗しきったフィリピン政府に発したつもりだ。

 犯人となった元警察官は、不当解雇の取り消しを政府に求めたが、当局が交渉をこじらせ、なおかつ犯人の弟を逮捕したりし、犯人を刺激したことが、犯行に及ばせた主因になっていると、各メディアが分析している。

 事件後は、アキノ大統領は笑顔さえ見せながら事件を語ることで、世界から大きな非難を浴びた。そして、事件現場はほとんど保護措置が取られることなく、炎天下に放置されていた。写真を見ると、現場検証担当の警察官は手袋さえはめずに証拠物に触れている非常識な光景に絶句する。それだけではない。乱射で無残な姿となった事件のバスを背景に、警察官らがリラックスして記念写真を撮影しているところを見ると、フィリピンという国に絶望感を持った。

43114_3香港市民デモ(8月29日午後、香港銅鑼灣)

 フィリピンは、アジアの中でも民主主義国家の優等生である。議会政治、三権分立、どれをとっても制度だけは一人前だ。しかし、腐敗が横行し、国民は貧困の底辺で喘いでいる。観光資源豊富な一方、観光市場が一向に伸びないのも、治安の悪さが主因であろう。

 私はこれまで、フィリピンのマニラとセブ島には、三度訪れたことがある。今年年末は、パラワン島(Palawan Island、フィリピン南西部にある島)で休暇を取る予定を立てていたが、計画を取り消した。