我が家に迷い込んだ1匹の野鳥

 朝、1匹の野鳥が我が家に迷い込んだ。美しい鳥だ。鳥が家に入ってくることは吉兆とも凶兆ともいわれているが、私はスピリチュアルなところに興味がないので解読はしない。

 メイドが捕まえて飼おうとしたが、こればかりは自由に返したほうがよかろう。怪我のないことを確認して、食べ物を与えた。鳥は食事をして元気になったところで大空に舞い戻った。

 我が家はクアラルンプール郊外にあって、背後に山を控えている。住宅地自体も森のなかにつくられていて、自然に溢れている 。夜が明けると同時に野鳥オーケストラが演奏をはじめ、庭には各種のカラフルな野鳥が飛来する。

 東京や上海、香港に住んだ頃は、大都会で、野鳥など基本的に無縁だった。マレーシアに移住してから、少しずつ自然に近づき、2015年に思い切ってクアラルンプール郊外に引っ越した。

 郊外に住むと、都会が恋しくなると思っていたが、事実は逆だった。都会から疎遠すればするほど、都会アレルギーが進む。私はもう都会に戻れない。離れてみる。距離を置いてみることから、今まで見えなかった部分が見えてくるのだ。

 日本も然り。私は日本を離れて28年。もう日本には戻れない。私にとって、日本は鳥篭だ。

タグ: