繁栄税で繁栄できるのか、マレーシアの愚策

 繁栄税。――少なくとも私は聞いたことがない。マレーシア政府は2022年財政予算案に、「繁栄税」(マレー語:Cukai Makmur)を新設した(11月7日付け南洋商報)。

 一言でいえば、儲かった企業からもっとたくさんの税金を取る、ということだ。マレーシアの現行法人税は24%だが、1億リンギット超の利益を出した企業は、33%の繁栄税を納めなければならない。

 これで税収が増えて財政が改善されるのだろうか。おもらく無理。結論からいうと、儲かる企業に対する懲罰的な徴税によっては儲かる企業を追い出す効果しか持ち得ない。

 少し前、私はマレーシア株を買おうとして、株投資の口座を作ったが、これでは当分用なしだ。儲かれば、株が上がるわけだから、儲かる企業は懲罰的な税金を取られれば、株が上がるわけがないじゃないか。投資家も尻込みする。マレーシアにとっては決して有益ではないはずだ。

 分配に重点を置く。この点では、日本もマレーシアも同じ。取れるところから取る、というのが分かるが、問題はうまく取れるかだ。企業も馬鹿ではないから、ただ税金を取られるのを座視するわけがない。

 そんなことは、政治家は百も承知だろう。彼たちも馬鹿ではないから。だったら、なぜ馬鹿なことをやるのか。やることが目的だからだ。やって国民にみせることに意義がある。庶民(愚民)に寄り添う姿勢、それが民主主義の原点。

 与党が愚策を打ち出したら、野党は反対する。野党が今度与党になったら、またもや同じことをやる。いたちごっこ、これは民主主義の日常的な風景だ。

 繁栄税で、繁栄できるのだろうか?

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