悪法もまた法なり

 「遵法精神は大事ですが、法律は、神様が作ったものではありませんから、不出来なところもあるでしょう。だからといって、守らなくてもいい、といっていたら、世の中めちゃくちゃになるでしょう」

 読者の方から、このような言葉をいただいた。とてもうれしく思う。

 「悪法もまた法なり」

 ソクラテスが裁判で死刑に処された時、逃亡を薦められた。当時のギリシャでは、死刑囚でも賄賂さえ渡せば脱獄できたにもかかわらず、ソクラテスは敢えて死を選んだ。

 法律は、社会的正義を実現するためのものだが、政治的に利用されたり、立法上の欠陥だったり良くない法律は世の中にたくさんある。悪法だから、守らなくてよいのか。社会秩序がますます乱れ、結果的に手続の正義が失われると、公正で透明な法治がなくなり、一企業でも一個人でも最終的に被害者となる。違法行為に加担する企業や個人は同時に加害者にもなる。