「悲しいことですが、社長の予言が見事に当たってしまいましたね」。車に乗ると運転手に言われた。
浙江省列車事故のことを言っているのだ。ブログではっきり書くのをためらったが、北京・上海高鉄(高速鉄道)開通の前日に、実は、私が乗車中に運転手につぶやいたことがあった。「中国の高鉄は、遅かれ早かれ大事故を起こします。殺人の高速が人の命を奪います。間違いありません・・・」
「中国の高鉄技術は世界一ですよ」と(恐らく宣伝報道を鵜呑みにしている)運転手が反論する。「『信じる者は救われる』か、『信じないものは救われる』か、歴史が証明します」、私は呆気なく答えた。
そして、私の「予言」があってわずか1か月も立たないうちに、大惨事が起きた。
北京・上海高鉄は到底乗る気になれないし、上海浦東空港のリニアモーターカーだって一度も乗ったことがない。出張で頻繁に往復する天津・北京間でも、高鉄は4回乗っただけで、いまはタクシーをチャーターしての往復に徹している。中国の高鉄よりも、顔なじみの運転手のほうが私にとって信用度が高いからだ。というよりも、高鉄の場合、運命が完全に第三者に握られているのに対して、自動車はある程度コントロールが効くからだ。
自動車の場合、一番怖いのが運転手の居眠り。私は定期的に運転手の動作を観察する習慣がある。ハンドルを握る両手の動きが怪しくなってくると、すぐに運転手に話かけたり、トイレ休憩を求めたりしてリスクを管理しているのだ。
私は幸せ者で、いつ死んでも悔いはないものの、せいぜい死後の死体くらいは丁寧に扱ってもらいたいし、死因や事故原因をはっきりしてもらいたい。浙江省列車事故の情報を見ていると、人命の尊さや死者の尊厳がいかにも粗末に無視、軽視されていることか、絶望と怒りを覚える。
空を飛ぶモノは時間通りに飛ばなかったり、陸を走るモノは不意に飛んだり・・・。無事に目的地に着けば、神様への感謝を忘れずに。
中国で一番高価なものは、ゴールドでも不動産でもない。「安全」なのだ。