エビと鯨

 「エリスさんのノーハウで、中国に進出した日本の中小企業に少しでも役に立てないか」。――最近このような要望も少なくない。私にとって深刻な課題でもある。

 当社の主要顧客トップ10社の売上高合計は、15兆円を超えている。顧客の9割以上が東証一部上場の大手。エリス・コンサルティングは従業員数10人未満の零細企業で、一匹のエビが鯨の群れを相手に商売をやっているようなものだ。

 私自身が取り組んでいる人事制度は、決して大企業にしかニーズがないわけではない。逆に中小企業の場合、よい早い意思決定ができるところ、私にとってやりやすい部分があるのかもしれない。だが、現状として中国の事業コストが急増するなか、コンプライアンスや人事制度に予算を割くことがなかなか難しい。年商数百億円の中堅企業でも、時々難色を示したりする。

 予算よりも期待効果である。投下コストに対して、中長期的にどのような効果を期待するのか。これついては、十分に説明しているかというと、必ずしもそうではなかった(反省)。人事などのバックオフィス機能より、マーケティングや販売に目を向けている企業がまだ多い。

 中小企業ないし零細企業は大企業よりも資源が限られているだけに、「ヒト」の活用は欠かせない。当社のような零細企業はまさに好例だ。福利は大企業に比べると、遜色は否めないが、従業員のモラル、モチベーションは大企業にまったく負けていない。

 「ヒト」で、企業は強くなることもあれば、衰弱することもある。これは、エビか鯨かに関係ない。