北京S社のクレーム、部下に仕事を任せるということは

 北京S社からクレームを受け、打ち合わせが先送りになって、私の北京出張も中止となった。

 北京打ち合わせに必要な資料リストを、当社担当者がS社に提出したが、なかに準備に時間がかかるものも含まれていた。「そんな、打ち合わせの直前に、言われても無理だろう」と怒鳴りつけられた。

 ほかにもいくつか問題があって、事件直後に、先日深夜1時から未明4時まで、担当スタッフを緊急招集し、問題調査・反省会を行った。

 なんとか、問題所在を突き止めてそれを解決できた。

 部下に仕事を任せたら、顧客からクレームを招きかねないから、常に自分で仕事をこなしてしまう管理職が多い。特に、駐在任期中に問題を起こしたくないから、そうしている日本人幹部がしばしば見られる。これでは、部下がいつまでも育たず、主体性を失い、常に指示待ち、何でも「どうすればいいんですか」人間になってしまう。

 私は最近、心を鬼にして仕事を任せているよりも、いつクレームがきてもおかしくないと冷や冷やしているのが本音。社内にはこう宣言している――。最悪の場合、クレームで収束せず、解約になってもいい、全員で売上減・収益減の痛みを分かち合おうと。これは、必要コストであって、社員教育の経費である。

 昨日、北京S社の副董事長から直々メールが来た。

 「クレームの件は、真摯な対応をありがとうございます。中国ビジネスではこの種のことは日常茶飯事なのですが、エリスさんのようなまじめな対応を取られる会社は少ないので、逆に、これで、弊員のエリスさんへの評価は、AAAとなりました・・・」

 クレームという危機を受けて社員が成長する。これほどよい教育がほかにない。社員を信用し、仕事を任せ、権限を与える。――これが教育の原点だ。