体調を崩して3日間寝込んだ後、今日は午後と夜の予定をすべてキャンセルし、午前中に体力を振り絞ってクアラルンプールへ出向いた。訪問先はKLCC近くに位置するマレーシア日本国際工科院(MJIIT)である。大学役員やJICAの責任者が集まり、私が提案した産学連携プロジェクトに大筋で合意が得られた。
AIの成長に伴い、世界各地で高度な産業人材が不足している。特に米中半導体競争の影響で、多国籍の半導体企業がマレーシアに次々と進出し、人材不足が急激に拡大している。大学は学問の場であるため、企業の実務に完全に適応することは難しく、そのギャップを埋めるために重要なのが、卒業前の実務教育である。要するに、企業目線の教育を取り入れることが求められている。
MJIITは、2011年にマレーシア工科大学(UTM)の一部門として設立された、日本型工学教育を提供する機関である。毎年、同校の卒業生の約3分の1が日本や日系企業への就職を希望している。JICAの支援で設立されたこの大学だからこそ、さらに多くの卒業生が日本や日系企業で活躍し、貢献できることを期待している。卒業前に実務研修を行うことで、企業は新人採用時の初期教育(OJTなど)のコストを削減でき、採用の促進にもつながる。
近年、新卒採用では、社会経験や実務経験のない学生が敬遠される傾向がある。企業は教育の専門家ではなく、将来的に採用できるか不透明な大学生に教育投資をするリスクも大きいのが現状である。そこで、私たちが産学連携の架け橋となり、両者をつなげていこうという考えである。タイミングも良く、経済産業省のODA予算を活用して、一部のコストを補助することが可能となり、現在AOTS(一般財団法人海外産業人材育成協会)と協議を進めている。
このプログラムが始まれば、MJIITだけでなく、他の大学にも順次拡大していく予定である。私自身もボランティアとして、一部のクラスを担当する予定である。