忘却曲線と順応曲線、新常態と新常識

 2枚の写真がある。同じマレーシア航空MH360便、同じクアラルンプール発北京行ビジネスクラスの機内写真。上は2014年4月20日で搭乗率15%弱、下は2015日1月25日で搭乗率95%以上(ほぼ満席)。

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 人間って物忘れの激しい動物だ。昨年3月8日のマレーシア航空MH370北京便事故直後、あれだけ恐れられ、敬遠されたマレーシア航空は1年も経たないうちに、ここまで搭乗率が上がったのはなぜだろうか。

 この1年の間、私はほぼ毎月マレーシア航空の上海便や北京便を利用してきた。まさに時間が経つにつれ徐々に搭乗率は右肩上がりのカーブを描いたようなものだった。

 「忘却曲線」というのがある。記憶の中でも特に中長期記憶の忘却を表す曲線だ。心理学者のヘルマン・エビングハウスは実験を通じて、「節約率」という概念を用いて忘却曲線を奇麗に描き出した。「節約率」とは、一度記憶した内容を再び完全に記憶し直すまでに必要な時間(または回数)をどれくらい節約できたかを表す割合である。

 しかし、奇妙なことがある。昨年末立て続けにまたもや不運と不幸が繰り返され、エア・アジア機が墜落した。にもかかわらず、エア・アジア機の利用を忌み嫌うことはなぜかあまりなかった。これは「忘却曲線」ならぬ「順応曲線」といえるのだろうか。

 非常態の頻発あるいは一般化によって、人間はこれに順応し常態として受け入れてしまう。この現象には、中国は「新常態」という美しい名前を付けてくれた。もちろん、非常識の一般化は、「新常識」と称してもよろしいではないか。「新」が充満する中国である。