我愛北朝鮮、上海にも喜び組か?

 上海には、立派な北朝鮮ワールドが存在します。
 
 私がよくお客さんの接待、会社の飲み会に使う北朝鮮料理店は、水城路・虹橋路角の洛城広場3階にあります。「平壌妙香館」という店です。あの有名な寿司専門店「彩寿司」の奥、あまり目立たない存在ですが、不況の今では珍しい繁盛店なのです。

 バレンタインデーの夜、日本からの来客と男二人で寂しく食事することになりました。少しお色気の店でも案内しようかと私が提案すると、お客さんがすぐにOKサイン。

 18時ジャスト、ヒルトンのロビーで合流、18時30分に虹橋のお店に到着してみると、三分の一の席がすでに客で埋まっていました。

 いつもの美人ウェイトレスが、「あら、最近来ていないわね」と熱烈歓迎。2年ほど前、この店を発見してから何回か通っていましたが、朝鮮語のできない私は、日本人の同行が多く、ウェイトレスたちとのコミュニケーションははかどりませんでした。

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 しかし、昨年後半から、状況が一変しました。

 実は、私は、1997年秋に北朝鮮旅行に行ったことがあります。その当時撮影したアルバムを店に持参したら、ウェイトレスたちがわっと嬉しい悲鳴を上げてくれました。「朝鮮じゃないですか?あなた、朝鮮に行ったことがあるんですが、日本人にしては珍しいね」・・・ 私は勢いに乗って「私は、金日成将軍の主体(チュチェ)思想を研究したことがあって(注:ちょっとかじったくらいだった)、朝鮮に大変興味があったので、97年に行きましたよ」と言うと、大歓迎されました。

 それ以来、私は、常連VIP扱いを受けるようになって、それを自慢して、日本人のお客さんを何回も店に連れて行きました。

 「北女南男」という言い方があります。男なら韓国(南)、女なら北朝鮮(北)ということです。韓国は、私が10回以上行っていました。北朝鮮は、97年の1回だけでしたが、どうやら、嘘ではなさそうです。
 
 北朝鮮の美女率は、かなり高い。というよりも、私の北朝鮮での一週間の滞在中に、不細工な女に一度も会ったことがありませんでした。外国人観光客の周りに、意識的に美女を配置しているのかもしれませんが、車が通りかかる街角も、農村部も同じでした。おばさんであっても、若い頃の美女面影が見られ、ただただ感心するのみでした。

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 北朝鮮の美女といえば、「喜び組」を思い浮かべない人はいないでしょう。釜山アジア大会で一躍有名になった北朝鮮の「美女軍団」にも、「喜び組」のメンバーが入っているとか・・・

 「喜び組」というのは、一体実在しているのでしょうか?実態は謎に包まれていますが、これまで数多くの映像証拠を見る限り、実在すること自体はまず間違いないようです。
 
 「喜び組」とは、何か?百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』で調べた内容を以下にまとめます。

 グループA(ダンス)=エンターテイメントが主で、ダンサーや歌手などの「歌舞組」。
 グループB(リラックス)=疲労回復の為のマッサージをする「幸福組」。
 グループC(セックス)=性的奉仕をする「満足組」、慰安婦に近い存在?

 主に18歳から25歳までの美女で、10歳までにスカウトされ、数段階の選抜を通過した才色兼備の女性だけが「喜び組」となれると言われています。一説によると、「満足組」に関しては処女だけが選抜され、入団後の異性交際も制限されているそうです。

 ついでにいうと、「喜び組」が誤訳で、性質上、「喜ばせ組」であるはずです。また、金正日氏の自称元・専属料理人の藤本健二も著書の中でこれと同様の主張をしています。李氏朝鮮時代の妓生(キーセン、主に官妓)に類似するとも言われますが、より性的奉仕者としての側面が強いかもしれません。

 話は、戻しますが、上海の北朝鮮料理店にいる女性たちは、「喜び組」に属するかどうか定かではありませんが、所属するのならば、上記グループA(歌舞組)に該当するでしょう。

 この北朝鮮料理店のウェイトレスたちは、凄い。ウェイトレス兼歌手兼ダンサー兼バンド兼司会なのです。
 
 ショータイムになると、忙しい忙しい。注文を取って、司会をやって、注文伝票を厨房に入れて、ギターを弾いて、今度は歌う。一曲が終わらないうち、「お~い、酒のお替り」という客を見かけては、客席に入って酒のサービスをします。お客さんは大喜び・・・

 このように7-8名のウェイトレスが入れ替わりで、サービスしては、ショーを続ける。いよいよ、「アリラン」の曲になると、クライマックスを迎えます。客席では手拍子と大合唱の嵐。舞台の横に、100元という値札の付く造花の束がおいてあります。アルコールで顔を真っ赤にした日本人のおじさんが二つの花束を歌手に贈っては、キャッシャーに花代を支払う・・・

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 このときは、店は満席状態。客数を少なく計算しても70-80名はいます。1人のウェイトレスは10人以上の客、注文、料理の運搬、食器下げ、勘定、焼肉や鍋はすべてウェイトレスがサーブします。それに歌、ダンス、しかも、生バンドですよ、CDのBGMではない!あとは、楽屋での衣装着替え。どう考えても、物理的に不可能に近い。しかし、彼女たちがちゃんとこなしているのです。汗一滴たらすことなく、舞台衣装も化粧も申し分なく、あの笑顔に余裕さえ浮かびます。しかも、マネージャーらしい人(黒服)はいません。

 北朝鮮の集団、チームワークの力は、世界一です。経営コンサルタントとして、ただただ驚くのみです。最近日本国内の外食産業でも、事務的なサービスをする日本人スタッフが多いのですが、この朝鮮人ウェイトレスたちは、誰もが店のオーナーであるかのように、完璧なサービスをこなしています。

 ウェイトレスたちが喜び組かどうか分かりませんが、上海北朝鮮料理店の経営効率の高さには、驚きます。一晩、120名の来客、客単価200元弱でも、売り上げは2万元、お昼の営業も入れると月商少なくとも40万元から50万元、昨今不況で閑古鳥が鳴く上海の外食業界では、とびきりの優等生ではないでしょうか。

 北朝鮮は、改革開放当初の中国と同じ、外貨をほしがっている。このような料理店は、お国への貢献を考えれば、ウェイトレスたちの功績が大きい。もはや、働き者の範疇を超えている。この国民性はやはり凄い。有名な経済学者張五常氏が「北朝鮮は、投資先として、アジア最後のフロンティア」と絶賛しているくらいです。

 政治的問題が解消されれば、外資が一気に北朝鮮に入るでしょう。ベトナムと比べれば、国民性だけでなく、地理的なメリットも大きく、まさにアジア最後のフロンティアです。

 まあ、投資云々の話さておいて、朝鮮料理を食べながら、日本からの来客と雑談します。もし、この北朝鮮料理店を東京で経営したら、大変なことになるねと・・・

 日本人にとって北朝鮮ほど近くて遠い国はありません。謎に包まれるこの国には、大きな好奇心と恐怖心を同時に抱いている。私が(妻と同行)、12年前に北朝鮮を訪れたとき、周りの友人から一斉に反対されました。何といっても北朝鮮イコール「拉致」や「テロ」のイメージが非常に強い。そのとき、無理やり同行させた妻は、平壌へ飛び立つ前に、1週間帰ってこなかったら日本領事館へ通報するようにと友人に頼んだらしい。そして、平壌空港に到着すると、すぐに、二人分の日本旅券をガイドさんに強制的に取られ(預からされました)、妻と二人が真っ青になった一幕がありました。

 いやいや、でも一週間の旅、非常に印象が良かった。政治的要素を考えなければ、国民性の素晴らしさで感動しました。平壌順安空港で、ガイドたちとお別れのとき、目頭が熱くなりました。とても、優しくて素晴らしい人たちでした。

 実は、今度、金剛山の紅葉を見に行こうと、二度目の北朝鮮旅行を企画中です。

 是非、皆さんも、北朝鮮料理店を使ってみてください。楽しいですよ。