日東電工事案(6)~経営事例学習になぜ実名を出すか

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 企業の実名を出す――。ニュース記事なら欠かせないが、経営事例学習になぜ対象企業の実名を出す必要があるのか。

 ビジネススクール時代を思い出せば、数多くのケーススタディーは公開クラスも含めて、すべて実名ベースで行われていた。担当教授は、学生に対象企業の関連情報を多元的に収集し、複眼的に分析するよう指示していた。

 私は経営コンサルティングの現場においても、この方針を貫いてきた。

 A社やB社という匿名事例学習だと、教師やコンサルタントから一方的に提供された、極めて限られたコンテンツだけが情報ソースとなる。視野が狭窄になり、複眼的な目線を失い、論理的分析に供する情報基盤それ自体に瑕疵があれば、問題解決のアプローチが間違った軌道に入ったりする。

 故に一方的に与えられた情報ではなく、学生や受講者は事例対象企業の実名に基づき、十分なリアル感とそれぞれの問題意識をもって、主体性を発揮し能動的に多様な関連情報を探し求め、議論の幅を広げ、本質への追及力を強化していく、というポジティブ効果に着眼するのである。

 たとえば、今回の日東電工蘇州工場閉鎖騒動事件。いろんな目線があるわけだ。

 私は企業の閉鎖や移転や縮小や、ないし撤退があっても、それがイコール悪いこととは思っていない。いや、むしろ適正な経営判断に基づけば、大変良いことなのだ。

 ただそれがなぜ騒動になったのか、そこに本質があるように思えたのだった。今後中国で同様な情況に直面した日系企業、特に当社顧客にとってはどのように騒動を回避し、あるいは最小化できるのか。それらが価値ある実務的な課題である。

 さらに、不幸にも騒動になってしかもメディアに取り上げられ、報道された場合、その後処理の方針と対策についても、今回の日東電工事案ではまさに生々しい事例を提供してくれたのだった。

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