日本企業よ、外国人を国際化の傀儡にするな!

 日本企業は中国人をはじめとするアジア出身者の雇用率をどんどん上げている。今朝の日経を読んでもこのような記事が大々的に掲載されている。

 そこで、私が常に考えている。中国人をたくさん雇用するだけで、中国市場で勝てるのか。現地化といえば、外国人の雇用を増やすだけですむことなのか。問題は中国人をどのくらい雇用するかではなく、中国人が思い切ってエンジン全開で働けるかにあるのだ。たとえ、日本本社で中国人社員と日本人社員の人数が逆転しても、海外現地化や国際化に適した企業制度、風土、文化がない限り、無駄である。せっかく採用され、期待をいっぱい持っている中国人社員もそのうち、がっかりして日本企業を絶望視するだけである。

 外国人採用のほか、社内公用語の外国語化や全日本人社員の外国語学習義務化など、最近多くの日本企業で流行している。国際化とは、言語ではなく、制度であり、風土であり、また文化であることを日本企業はあまり意識していないようだ。日本人社員にも無理やり外国語で会話をさせると、逆に意思疎通に問題を起したり、そのうち、外国語の「建前」と日本語の「本音」の分化をも招致しかねない。

 外国人の採用や外国語の勉強は、重要ではないといっているわけではない。ただ、いまの日本企業にとって、いちばん重要なことは、ゼロベース思考なのである。日本国内での成功経験をとことん捨てることだ。コンサル現場で、「日本ではこうだ」という日本人経営者もよくいるが、まず「中国ではどうなのか」だけを考えてほしい。

 中国人をなぜ採用するか。彼たち彼女たちは「中国はこうだ」ということを良く知っているからだ。でも、彼たち彼女たちが「日本はどうなのか」「本社はどうなのか」と一々気にしなければならない環境となると、社員にはストレスがたまり、会社にも真の現地化が机上の空論となり、そのうち社員も会社も疲弊するだけである。

 中国人や外国人の大量採用は、語学屋増員か(真の権限委譲とインセンティブ付きの)意思決定者増員か、まず目的をはっきりしてほしい。

 日本企業よ、外国人を国際化の傀儡(かいらい)にするな。

 真の国際化とは、究極の現地化である。HSBCのキャッチフレーズを見れば一目瞭然――「The World’s Local Bank」。そう、世界の地銀である。このような風土、インフラ構築にまず大至急着手してほしい、日本企業には。

 これで、年内の仕事納めとさせてもらう。皆さん、良いお年をお迎え下さい。