見えない太湖の太陽

 無錫・太湖、今日も快晴。しかし、太陽はよどんだ空気に包まれ、輪郭がまったく見えない。こんな快晴なのに、青空も見えない。

70743_2今年最後の日の出、よどんだ空気に包まれる太湖の太陽

 無錫や蘇州あたりの工業地帯の環境汚染がその原因かどうか定かではないが、最近中国のメディアを読んでも、「経済発展やGDPの成長と引き換えに、環境を犠牲にした」といった非難記事が目に付く。

 世の中のすべては、損と得が共存している。人間はつねに選択を強いられている。経済成長を選ぶなら、ある程度環境を犠牲にしても仕方がない。これは国民の合意を得ているかどうかは分からないが、少なくとも、鄧小平氏が提唱した「発展是硬道理(発展こそが王道だ)」が、その根拠の一つとなっているはずだ。

 素晴らしい明日のために、今日を犠牲にする。しかし、明日が素晴らしくなる保証はあるのだろうか。不確定の将来に、目先を犠牲にしてもいいのだろうか。そんなことを言っていると、反論されるかもしれない。将来に夢をもつことでどこが悪い?なるほど世の中は立場や目線が一つ変われば、正解も無数にあるのだ。

 ふと私が思った。環境破壊の元凶が工場だとすれば、この界隈に日系の工場もたくさん入っている。この日系の工場や企業の何社かに、私はコンサルを提供しているし、もちろんコンサル料も受け取っている。だとすれば、私も環境破壊に加担していることになる。その線で考えていくと、これらの企業の製品、あるいはこれら企業が作った部品が組み入れられた最終製品を購入した消費者だって、加担しているとでもいえるのか・・・

 よどんだ空気に包まれる太湖の太陽を眺めながら、2012年は良い年でありますようにと祈った。ちょっと待て、そもそも「良い年」とは何だろうか?・・・