決して休暇中の読書に似合わない、硬質的な本だが、今回、ホテルに持参したのは、マイケル・サンデル氏の「これからの『正義』の話をしよう――いまを生き延びるための哲学」。
実生活の事例を次々と挙げるこの本は、哲学の基礎研究的な無味乾燥さを極力に抑え、臨床医学的な切実性を全面的にアピールしている。それでも、かなり脳力を費やして読破しなければならない一冊だ。
この本は、日本人の価値観にかなり揺さぶりをかけるに違いない。5人の人間が助かる代わりに、1人の、しかも何の罪もない人間が犠牲にならなければならない。あなたはその判断を求められたら、どうするか?・・・。私は多くの研修やセミナーで受講者に問いかけたことがあるが、ほとんどの受講者が言葉を濁して、真正面からの回答を回避している。
日本人も中国人も中庸的というか、物事に白黒をはっきり付けたがらない傾向が強い。が、個人の生き方ならともかく、会社の経営者となると、「脱原理原則的中庸」は決して許されるべきではない。最近、日本企業の経営者で、判断や意思決定から逃げる人が輩出している。その決定的な手法は、慣習や既成概念へのしがみつきである。
コンサル現場でも、しばしば遭遇する。様々な事象に対しての捉え方に矛盾が生じるのは、そのほとんどが原理原則の不在に起因する。経営者の仕事は、ほかでなく、「選択」である。苦渋な選択を強いられたとき、「選択」の放棄を選択することは、経営者失格である。
年末なのに、もう少し柔らかい話をしてもいいのではないか。まあ、ほのぼのとした画像で勘弁してください