ご結婚おめでとうご離婚おめでとう、お幸せに!

 本日3月21日、人事労務講座シリーズ第8回目「賃金制度」。

 賃金といえば、評価が絡んでくる。評価といえば、欠格者の解雇も欠かせない。先日、某社のS董事長にこう言われた――。「立花さんご自身の会社、入社してはすぐにクビを切る人何人も見てきたが、それはいかがなものか」。一応、批判として私は受け止めた。あえて、この批判を研修会で皆さんに披露することにした。

76275_2賃金制度研修会(2012年3月21日、上海・花園飯店にて)

 明らかに、S氏は解雇を「悪」として捉えているようだ。しかし、私は全くそう思っていない。

 「解雇」――日本人にも中国人にも、後ろめたさを感じずにいられない。私は、「解雇」も「辞職」も基本的に同じだと思っている。従業員が「職を辞する」。会社は「雇いを解く」。いずれも双方相互「選別」の結果である。

 「会社が悪い」とか「従業員が悪い」ではない。それは相対的であって、A会社とB従業員が合わないから分かれることになる。「解雇」は会社が言い出し、「辞職」は従業員が言い出すものである。それだけの差だ。

 互いの相性が良くない会社と従業員が、無理やり一緒にいるほど苦痛なことはない。両者に対し良くないことだ。だったら、会社はもっとその会社に合う人を雇ったらよいし、従業員ももっと自分に合う会社に入ればよい。早いうちに「解雇」や「辞職」したほうがよいだろう。

 当社の従業員は、基本的に5、6年の長期選手か、5、6か月の試用期間解雇という二つのグループに分かれている。S董事長が指摘したとおり、確かに当社はつねに適任者を選別しているのであって、また双方向的に新入社員に選別してもらっているのである。試用期間は相性確認のための期間だから、解雇について私はまったく後ろめたさを感じない。逆に、無理して当社で我慢するよりも、一日も早くその方に合う会社を見つけてもらったほうが、その人が幸せになると思う。

 「定期人事考課の面談の席で、あなたの業績は下から10%に属していますよと言われれば、その従業員には自発的に当社を辞めてもらい、よその会社に移ってもらうようにしています。その従業員に合う会社に行ってもらったほうが、その従業員のためにもなります」

 私の言葉ではなく、GE元CEOジャック・ウェルチ氏の名言で、同社の人事方針でもある。

 結婚して幸せになることもあれば、離婚して幸せになることもある。だから、「解雇」や「辞職」が幸せになる一つの方法であれば、「悪」どころか、むしろ大きな「善」だ。

 「ご結婚おめでとう、お幸せに」もあれば、「ご離婚おめでとう、お幸せに」もあるわけだ。人間は幸せになることが一番大切なことだ。

 私自身も、会社を辞めて(半分クビを切られたようなものだ)幸せになれた一人である。辞めた会社には、大変感謝しているし、「解雇」や「辞職」という「会社との離婚」の受益者の一人でもある。周りには、こういった方も大勢いる。