遡っての増額請求、不条理な対顧客コミュニケーションの原因とは

 「以前はサービスAとBが一体になっていましたが、分割する方針となりました。また、今回ご請求分は、3年に一度のメンテナンス費用の見直しや中国の人件費高騰のため、値上がりをしております。ご確認ください・・・」

 上海某日系業者の、新任担当の日本人Xさんから送ってきた請求メールである。

 一体化だったサービスの分割は業者内部の運営方針の変更であって、顧客がどうのこうの口出しする立場にない。ただ、この分割によって顧客に対しどのような実質的な変更があるのか、もう少し丁寧に説明してほしかった。

 そして、「3年に一度の費用見直し」。料金の見直しもご自由だが、増額請求となると、これが立派な契約変更だ。契約変更は一方的な通知事項ではなく双方の事前合意事項であるため、顧客側の契約継続の意思を問う必要も出てくる。いくら「中国の人件費高騰」であっても、一方的な値上げをただ押し付けるとは少々乱暴すぎないか。

 しかもよく見ると、自動更新日が過ぎてからの請求だった。事後の一方的増額通知、遡って料金をなんと45%のアップ。ずいぶん乱暴、いや無謀なやりかたではないか。

 おそらく、担当者のXさんは、上司が社内で言っていることをそのまま顧客に伝えたつもりで、このような結末になったのではないかと推測する。上司が伝えた経営や運営方針を対顧客サービスに落とし込むために、一連の「情報処理」作業、つまり顧客が受け入れてくれる論理や表現に転換する作業が必要だ。これは現場担当者の付加価値の積み上げ過程でもある。この処理作業の欠如で消化不良を起こしてしまったのではないかと・・・。