「政治に関心がありません」。という日本人が多い。
まず、「政治」とは何か。広辞苑では「人間集団における秩序の形成と解体をめぐって、人が他者に対して、また他者と共に行う営み。権力・政策・支配・自治にかかわる現象」と説明されている。
そうなのだ。政治というのは、実は知らずにわれわれの仕事や生活のいたるところに存在し、営みとして日常的に行われているのである。なので、政治に無関係でいられないのは人間であって、いやでもすでに政治に関わってしまっているのだ。
孤島に一人で生活しない限り、「人間集団」が存在し、その「人間集団」単位で政治の営みが行われる。ただ政治のレベルが違うだけである。国際政治から国家政治、企業や組織内政治、様々な集団や共同体内政治、ないし家庭内にも実は政治が存在するのである。
「私は日中友好に取り組んでいるだけで、政治に関心ありません」という人がいる。ちょっと待ってよ。いわゆる「日中友好」自体が立派な政治ではないか。しかも多くの利権が絡んでいるかもしれない。ボランティアだって慈善団体だって組織となった以上、政治の営みが行われる。
政治に無関心というのは、ドロドロの世界に関わりを持たないニュートラルで中性的な自己、あるいは少なくともその意思をアピールしたい、そうした心理が働いているからだ。不偏不党の姿勢は、なるべく攻撃から逃れようという自己防衛本能がその根底にある。気がつけば、それ自体が人間集団のなかでより安全に生き延びるための政治手段ではないか。
政治に無関係でいられない以上、政治に無関心でもいられないのが人間だ。最近、企業経営者向けにセミナーや勉強会では政治の成分を意図的に増やしている。企業政治のこと、精通してもらいたい。特に人事となれば、政治そのものである。
政治は、人間集団から逃げられない人間の宿命であり、死ぬまで付きまとう。
政治に無関心と言えば、中国人も政治に無関心です。自分が影響を持ちえないところで動くとなれば、誰でも無関心になり、不満を言うようになります。
日本人の多くが政治に無関心になったのも同様な理由ではないでしょうか。民主主義とは形ばかりで、既得権者と新富裕層がパイを奪い合うばかりの社会。庶民の一票は何ら力をもちません。
政治に無関心な人が増えるのも無理はないでしょう。
幸田さん、本稿は「政治は何も国家レベルだけでない」ことを論じるのが趣旨です。