マレー東海岸の旅(10)~真のマレーシアとイスラム世界

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 1週間弱のマレー東海岸の旅を終え、8月18日(木)夕方、コタバルからクアラルンプールに帰還。旅の総括として、何を書けばいいかといろいろ考えていると、やはりイスラムのことに帰結する。

160818-0912-Kota Bharu-イスタナジャハール (Istana Jahar)コタバルのイスタナ・ジャハール、修学旅行中のムスリムの子供たち

 マレー半島の東海岸は、マレー系の人々、つまりムスリムが絶対的多数を占め、本質的なイスラムの世界である。外国人向けのリゾートとしての島々を別として、沿岸部の街々はどこもイスラム的であって、日本人にはある種非日常的な感を与える。

 むしろ、このような半島の東海岸こそが、真のマレーシアの姿ではないかと、私は思う。

 マレーシア移住の決断にあたって、イスラム国家というのが、正直私にとってマイナス要素であった。異質的理念への本能的な抵抗や拒絶が自分の中にあったことを、いま思い出せば、大変恥ずかしい。

 日本人のイスラムやムスリムに対する知識や理解があまりにも不足している。むしろ誤解のほうがよほど多かった。これはムスリムに対し甚だ不公平である。

 ビジネスに関しても、日本企業でマレーシアに進出しても、その多くはマイノリティーの華人市場にしか目を向けていない。同質市場への容易なクイック・アクセスだけがその理由であろう。ようやくイスラム市場が話題に上ったとしても、ハラール認証といった極めて低い次元でしか語られていない。

 ついでにムスリム客も取れればいい。いまの日本企業のほとんどがこう考えているだろう。イスラム市場について、真剣に何も考えていない。勉強も不足しているか、まったくしていない。

 現代世界の秩序がキリスト教の基盤に成り立っている事実は無視できない。だからこそ、欧米企業よりもキリスト教国ではない日本は、先天的な優位性をもっているのではないか。無宗教というニュートラル的なポジションが日本の強みである。

 「ジャパン・ナンバーワン」。マレー東海岸を旅して、ほぼどこへ行ってもそう言われる。いまだに、そう思われているのだ。なかに、「ジェプン・ナンバーワン、チナ・ノー」(日本は最高、中国はノー)という人もいる。日本に対する絶対的好感度はもはや問答無用だ。

 このような好条件がそろったマレー市場、ムスリム市場は規模的に、マレーシア総人口の4分の3も占めている。マレーシアのムスリム市場でしかるべきビジネスモデルを作り上げれば、南方には人口億単位のインドネシア市場、さらに西へ行けば中東という未踏の地がある。

 湾岸諸国はもとより、何よりもイランとサウジアラビアという2大イスラム市場は決して無視できない。イランの制裁解除でもう少し時間はかかるが、徐々に市場が出来上がるだろう。また、世界でもっとも閉鎖的と言われるサウジアラビアに関して、原油安で数年中に財政破綻する可能性も示唆されつつあるなか、段階的な門戸開放も十分あり得るだろう。

 さらに長期的に視野を広げれば、あと三十数年で世界のイスラム教徒の人口がキリスト教徒とほぼ同じになる(米調査機関ピュー・リサーチ)。ムスリムが急増するこの世界で、イスラム市場はもはやニッチではなくなる。このような未来を見据えて、日本企業はどのような戦略を考えているのだろうか。ハラール認証だけでは、落第だろう。

<終わり>