内戦前夜の囁き、米国の何がいちばん強いか?

 アメリカの内在的強み、国内において何が一番強いかといえば、合衆国憲法であろうか。最高裁であろうか。いいえ、私はそう思わない。銃だ。民間人が所有している銃である。

 人間に理性が働き、社会システムも正常に動いていれば、憲法や憲法の番人である最高裁がもっとも強い存在になる。もし何らかの原因で最高裁が正常な機能を失った(たとえば何人かの判事が買収された場合)場合、では、国民はどうするのだろうか。憲法が邪悪に歪められたまま、奴隷になるのか、それとも銃を構えるのか。

 調査によれば、世界人口の4%を占める米国人が2017年末時点で所有していた銃の割合が、世界の民間人が所有すると推定される8億5700万丁のうち、46%に達しているという。米国民が合計4億丁の銃を持っており、2017年時点で100人の住民に対して120丁の銃が存在していた。

 全民皆兵だ。

 情で問題解決できないときは、理を用いる。理で問題解決できないときは、法を用いる。法で問題解決できないときは、力を用いる。この地球上、問題解決の最終手段は力、暴力にほかならない。

 アメリカで、法を破壊する勢力が存在し、その勢力が最終的に司法システムを破壊した場合、暴力による問題解決の手段が国民に残されているのだ。要するに暴力革命だ。そういう意味で、アメリカは強い自浄力をもっているわけだ。

 トランプの支持層といえば、体格の良い白人男性労働者のイメージが強い。彼たちは都心のオフィスビルで働くエリートと違う。財産も将来も何もない。グローバル化など糞食らえだ。彼たちが法にも絶望したとき、どう豹変するかを想像すればいい。

 トランプが米国の地方演説をすれば、郊外の空港(会場)に何万人もの人たちが駆け付ける。駐車場が足りず、5~10kmも離れた場所に駐車して徒歩で来場する人も多い。夜の帰り道、零下に下がる気温で途中で倒れる人が続出し、救急車が次々とやってきたニュースをみたとき、私は鳥肌が立った。

 この人たちは、グローバル化の「Loser(敗者)」といわれている。確かにその通りだ。しかし、敗者には強みがある。失うものも、恐れるものも、何もないのが彼たちの最大の強み。彼たちに一縷の希望を与えたのは、トランプだ。しかし、グローバル化のWinner(勝者)たちは今、この一縷の希望すら奪おうとした。しかも、不正な手段で……。

 失望した彼たちは、最後の、最後の希望を法に託すだろう。もし、この最後の希望まで無情にも奪われたとき、彼たちは絶望する。希望から失望、失望から絶望へと追い込まれた人たちはどんな行動に出るか。想像するだけで鳥肌が立つ。

 米国のなか、一部、内戦前夜だと危惧する声が上がっているが、要はこのことを言っている。民主党はやりすぎない方がいいと思うけれど。

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