サイゴン陥落、そして46年後

 1975年4月30日、サイゴンが陥落し、南ベトナムは共産主義者の手に落ちた。共産主義から逃れた人たちは懸命に脱出のへりをよじ登り、そして海を渡って、自由の世界アメリカへと向かった。

 わずか46年後、ワシントン陥落。世界一の自由民主主義国家アメリカ合衆国が、社会主義・共産主義者の手に落ちるとは、誰も想像できなかった。サイゴンから脱出した人々、そして彼たちの子孫はどのような心境であろうか。これからどこへ向かうのであろうか。

 そもそも、ベトナムや朝鮮半島で命を捧げた兵士たち、彼たちは何のために戦ったのであろうか。共産主義から我々の自由な浄土を守るため、子孫が独裁下に置かれないため、彼たちは異国の土に血を流した。アーリントン墓地に眠る英霊たちに、アメリカ人よ、顔を向けることができようか。

 「明日、世界が滅びるとしても、今日、あなたはリンゴの木を植える」。ベトナム戦記を残してくれた開高健の名句。

 明日はどのような日か、誰も分からない。明日はあるか、誰も分からない。でも、今日は目の前にある。だから、リンゴの木を植えよう。

 共産主義者と戦って亡くなった方々に、黙祷を捧げる。

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