<上海>Sushi Oyama 鮨・大山、鮨とSushi談義

 「寿司」、「鮨」、「Sushi」。同じか?どこか違うのか?Sushi Oyamaでは、考えさせられる。

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 少し話題を変えよう。さて、あなたは、生きるために食べるのか?それとも、食べるために生きるのか?Sushi Oyamaは、食べるために生きる人に生きがいを与えてくれる店だ。

 稀代の美食家北大路魯山人は食の総合芸術にこだわり続けた。料理や皿、小鉢はもちろんのこと、膳や食卓まで食べる環境が美的感覚で統一されることを求めた。料理はただ食べるものではない、伝統美の集大成であり、総合芸術であった。

 しかし、北大路魯山人が生きた時代には、異国の地で日本料理を食べるというシーンが想定されていなかった。日本文化を脱した海外の環境に、和の美食をいかにクリエイトし、出していくのか、いまの職人に新たな難問を投げかけた。

36686_2刺身
36686b_2甘鯛

 そういう意味で、大山さんは見事に「鮨」と「Sushi」のあり方を見せてくれた。

 「中国国産のネタは使えない」と大山さん。ネタは基本的に日本からの輸入物。中国産に比べると、味よりも繊細さがまったく違う。そして、サービス品質が悪い中国だが、この店では日本人女将さんが2名も配置されている。中国人ウェイトレスもかなり教育されている。自然な笑顔で接客の技を身に着けている優秀な子も1~2人いる。もちろん、全員日本語OK。

 店は東湖路に位置する旧洋館の2階にある。旧洋館は改造され、ほかにはスペイン料理店や画廊なども入居していてとてもお洒落な雰囲気だ。決して広くないSushi Oyamaは、通常予約が取れない。繁盛店になっている大きな理由の一つには、多くの中国人や外国人客の贔屓層がいることが挙げられる。

 中国人客を見ると、もちろん富裕層がほとんどだ。企業経営者やモデルっぽい女性、なかに、ドンペリを持ち込んで飲むグループもいたりして、とても華やかな雰囲気だ。ちなみに、シャンパンと寿司の相性は果たしてよいのか、私は古い人間で寿司なら日本酒の一筋だが・・・

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36686b_3アワビは軽く塩を振るだけでいただく

 私が握りたてを手でつかみ口に運ぶのを見て、外国人は「Why」を聞いてくる。

 「うん、それはですね。握りたてを職人さんの体温、ぬくもりが付着したままいただくのです。職人さんとの会話です。心の会話です。美味しいことの表現でもあり、また職人さんに対しリスペクトを表現する方法でもあります。ぬくもり、Nukumori is Japanese Culture!」と、私流に答えてしまう。

 最近、Sushi Oyamaにいくと、同じ種類のものを何回も頼むようになった。

 「ほんとうのものの味がわかるためには、あくまでも食ってみなければならない。ずっと続けて食っているうちに、必ず一度はその食品がいやになる。一種の飽きが来る。この飽きが来たときになって、初めてそのものの味がはっきり分かるものだ」(「味覚馬鹿」より)

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 北大路魯山人の著作を読むと、次のように記された一節がある(正確な原文ではなく、私の記憶によるものだ)――。「ふぐは、もっとも淡白な食材だ。でも、ふぐを一週間食べ続けると、『あなた、ふぐ臭いね』と言われてしまう。どんな淡白な食材でも、食べ続けると、必ず体に匂いが染み付く」

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 何回何回も食べ続けて、その食材の良さがはじめて分かるのだ。その良さがわかってくると、表現も多彩になる。料理を食べて、ただ「美味しい」と表現するだけでは、初心者ならまだしも、少しでも美食の道を走っている経験者なら、料理人に対し甚だ失礼千万だ。

 そういう意味で、Sushi Oyamaは私の美食の実践場の一つになっている。

★Sushi Oyama(鮨・大山)
<住所>   上海市東湖路20号邸雅居(Diage)2階
<電話>   021-5404-7705
<営業>   17:30~22:30 (日曜定休)
<予算>   1000元~1500元/人