万博に目を奪われるな、時代激変の序幕が水面下で

 世界の目が、上海万博に奪われている。目立たぬ予兆で、時代の激変の序幕は静かに開かれようとしている。

 北朝鮮の金正日総書記の特別列車が5月3日早朝に中国入りし 、遼寧省丹東市に到着した後、大連に向かった模様。

36735_2北朝鮮の労働者(Welt.de写真)

 アジア最後のフロンティア、北朝鮮が、開放に向けて動き出した。今回の訪中で金書記が腹を決めれば、2~3年以内に、北朝鮮は改革開放の市場経済路線に舵を切るだろうと私が見ている。

 中国は、経済成長で我が春を謳歌し、五輪や万博で国威発揚し、労働法で人件費コストを引き上げる一方、人民元の切り上げを目前にしている。それに対し、北朝鮮は改革開放に踏み切れば、中国に対抗しうる、大きな競争力を発揮するだろう。

36735_31997年平壌の街頭にて(日本人に稀有な北朝鮮個人旅行)

 人口わずか2300万人の北朝鮮を決して軽視してはならない。韓国製品を見れば分かる。同じ朝鮮民族の国民性は、規律厳しく製造業に向いている。そして、意志力や団結力も中国人に勝るとも劣らない。経済はどん底状態だから国民は背水の陣を敷く。平壌政府の統制力が強く、中国のような「中央VS地方」の構図もなく、政策実施の効率が高い。もちろん、賃金コストは中国よりはるかに安い。最後に、北東アジアの中心という地理上の優位性を有し、物流面のメリットも大きい。

 私の予測が当たれば、今後5年で新興国の構図は大きく変わろう。アジア主導の「新BRICK」が生まれるだろう(B=バングラデシュ、R=ロシア、I=インド+インドシナ、C=中国、K=北朝鮮)。それに向けて日本はその戦略的地位とプレゼンスを考えているのだろうか。国家戦略室は、いつのまにか「選挙戦略室」になっていないか。

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