自宅謹慎、総経理よ法的問題さえなければそれだけでいいのか

 自宅謹慎。

 今日の上海セミナーでは、在中某日系企業の責任者から、違反従業員への懲戒として、自宅謹慎を命じ、それが法律的に問題はないかと聞かれた。私は、給料は支払っているのかと聞くとそれは全額支払っているという。ならば、法律的には問題がない。が、管理上では大きな問題がある。

 悪いことをした従業員は、逆に給料を全額もらって、自宅で遊んでいられるのですよ。それはおかしいじゃないかと。以前、別の会社でも同類ケースがあって、うちの中国人弁護士にその話をしたところ、弁護士は、「それは何の咎めになっているのか、ご褒美じゃないか」と目を皿にして驚いた。自宅謹慎について、日中間に大きな認識のギャップ、通念上の相違があるのだ。

 「総経理さんよ、それは大きな間違いです」。私はセミナー会場でそのまま率直に申し上げた。法的問題はあるかと聞いているのは、法的リスクを負担したくないからであろう。お気持ちは分かる。だが、法律上の問題さえなければそれでよしというのなら、顧問弁護士さえいれば十分で、総経理も要らないだろう。

 総経理というのは、経営の重責を負っている。法律だけでなく、管理上の公平性、社内の正義(もちろん中国の社会的通念も考慮して)、会社の利益、短期のみならず長期的に企業のあるべき姿を常に描き、原理原則に則った経営決断を求められている。目先の無事だけを求めるのでは、完全適格な経営者とは到底いえない。

 このブログをこの総経理が読まれているのかもしれない。あえて書かせてもらう。もう当社に依頼がこなくなるのかもしれない。私のセミナーに二度と足を運ばなくなるのかもしれない。それでもよい。企業の経営者がどう感じようと、正論をまっすぐ申すのがコンサルタントの責務である。

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