プロダクトに備わる機能の約80%がほとんど使われないという(独立系の国際IT調査会社スタンディッシュ・グループ(Standish Group)による調査)。
それは何もITプロダクトに限らず、電化製品や自動車など他の製品にも言えることだ。私の場合、製品の説明書を読むのが大嫌いだ。時間コストが取られる「損」と機能の利便性で得る「得」をまず天秤にかけて評価する。革命的な技術革新による機能更新でもない限り、さほど意味を感じない。
インターネットに接した当時、1990年初期、私はワープロを捨てて、高価だったノートパソコンを購入し、ピリリーピリリーと電話のダイヤル回線を使ってネットサーフィンすに熱中した。そこから15年くらい経って私はiPhone 4を購入し、「技術革命」の興奮に陶酔した。さらに10年経過して、AIに飛びついた。
私にとって、インターネット(PC)、スマホ、そしてAIという3つの新技術だけが革命だった。パソコンもiPhoneもハード自体は、8~10年以上の償却期間で使っている。iPhoneは中古機しか買わない。マイクロソフト製品に関しても、エクセルやパワーポイントすら使うことが少なく、ワード1本に絞り込んでいる。
私は職業柄、そして自分の価値観もあって、すべての商品について、エッセンシャルな基幹機能だけに着目している。自動車のメルセデスベンツは、高速走行の安全性目当てで買ったのだが、いろんなボタンやスイッチが付いていて何のためのものかさっぱりわからないまま10年以上も運転している。
現代のマーケット全体を見て、基幹機能次元で言えば、8割の機能だけでなく、8割の商品も、不要だ。その8割の機能・商品を開発・製造するコストは、無駄だ。そのコストをカットして、基本機能だけを集約した製品を、半額で売ってくれないかと願っている。しかし、これは現代資本主義の「原則」に反するので、願いが叶うことはなかろう。
新商品、新機能、ニューリリース…。現代資本主義の本質は、過剰開発、過剰製造、過剰販売、過剰購入、過剰廃棄にある。これはつまり、私が言ってきた資本家による「消費搾取」である。とにかくお金を使わせる。お金を使うと、来る日も来る日も働かなければならないので、そこで「労働搾取」が生まれる。
今の資本主義社会では、「選択肢が多い」ことを善としている。しかし、「選択のコスト」を無視している。いや、隠蔽している。