チェコ紀行(9)~夜空に聴こえてくる「わが母の教え給いし歌」

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65925_1チェスキー・クルムロフの街灯

 散歩したくなる。――あっという間に何キロも歩いてしまう自分に驚く。チェコの街は、昼だけでなく、夜の景色も素晴らしい。

65925_2チェスキー・クルムロフ
65925b_2プラハ城・聖ヴィート大聖堂

 街灯に浮かぶ中世そのままの佇まいを残す石畳の小径、幻想的にライトアップされた教会、優しい街灯の灯りに沈思する彫像たち、そして古い建築物の谷間から差し込んでくる月の光・・・

65925_3プラハ旧市街広場とティーン教会
65925b_3カレル橋から望むプラハ城

 繁栄を謳歌する中国の大都会の派手なライトアップに疲れた私の心が、洗われる。悠長な歴史に包まれ、甘美な孤独から生まれる自己存在感に誘われ、沈思の世界に浸ってゆく。

65925_4
65925b_4プラハの街角

 どこから聴こえて来そうだ――。ドヴォルザークの「わが母の教え給いし歌」

 「昔、年老いた母が私に歌を教えてくれた時、その目に涙を浮かべていた。
 今、私も親となり、その歌を子供に教えようと しているが、
 日焼けした頬に、いつのまにか同じように涙が流れる」

<次回>