社会が変わって会社が変わる、会社が変わって社会が変わる

 今日は年度末。当社にとって記念すべき日でもある。12年半続けてきた中国ビジネス情報配信「ERIS中国ゼネラル」は、本日をもって終了した。4月から週1回の「ERIS中国経営レポート」に統合して、経営内容を中心としたコンテンツになる。

 当社は黒字の中で、中国での業容縮小に切り替え、周囲から不思議に思われていることも多い。それはさておいて、業容縮小とともに、人員ダウンサイジングも始まった。もちろん、一切解雇は行わず、依願退職とともに正社員を補充せず、業務アウトソーシングと人材派遣に切り替える。

 先日、解雇のことを書いたら、面白い書き込みがあったので、所感を述べたいと思う。

 私は経営コンサルタントとして、徹頭徹尾の成果主義派であって、非成果主義派の経営者はまず私のことを敬遠するだろうし、現に手がける案件の顧客企業の経営者とはまず理念上の一致がなければ、仕事を受けることもない。

 これも、先日ブログで書いたとおり、私は人事コンサルティングに関して、全従業員を幸せにする能力を持ち合わせていない。私の制度で、とっても幸せになれるのはせいぜい2割の従業員で、あと大多数の従業員はむしろ淡々と仕事をこなし、最底辺の2割ほどの従業員が不幸せ(会社に認められない)あるいは幸せ(会社を辞めてほかに幸せになれる企業へ転職する)になる。

 社会が変わって会社が変わる。会社が変わって社会が変わる。相互の因果関係は否定できないだろう。私は、会社を変える仕事を専門とする人間で、社会を変える能力も、そこまでの高き志も持ち合わせていない。貶されても甘受する。変えようのない現実で、変えるつもりはない。

 でも、何か変えなきゃいけない、と思う人は意外に多い。

 社会を変えるか、会社を変えるか。私はコンサルタントとして後者を選ぶ。会社を変えるか、自分を変えるか。私は13年前のサラリーマン時代に後者を選んだ。13年前に比べて少しではあるが、スケールが大きくなったことでちょっぴり天狗になって自画自賛している。まったく自画自賛に値するものではないとは思うが。

 会社を変えるということは、変化が持たされることだ。私が立ち会った会社の新人事制度告知大会で、このような質問、いや非難といったほうがいい。このような非難を浴びせられることがある――。

 「あなたが作った人事制度はものすごく流動性があって、従業員に不安をさせるものではないか」。

 「ご指摘のとおりです。現状は従業員の皆さんが安定しすぎて、安泰の領域に入っている。これじゃ、会社はいずれ潰れます。だから、安定を奪って、流動性を加えるのは新制度の主旨です。安定を奪います」と私が答える。

 上記は二種類の異なる価値観、論理である。私は前者を否定するつもりはまったくない。ただ、私の制度を導入する会社は後者の価値観を取ったわけで、異なる価値観の従業員がもしかすると、その会社で幸せになれなくなるかもしれない。それは非常に残念なことだと思う。ただ、選択の自由を与えてもいいじゃないかということで、最近同じ企業のなかで、一社二制度を実施するモデルを作り上げている。

 世の中、大多数の人間に幸せになってもらうために、むしろ社会主義制度が最適だと思う。人間はつねに横にいる他人と比較する(相対比較)傾向があり、貧富の格差よりも、平均貧困のほうに幸せを感じやすいのである。貧富の格差もよくない。平均貧困もよくない。平均富裕が一番。それは誰もが願っているのだが、残念なことにそれは夢にしか出てこない、幻の理想郷である。いや、夢でも立派なものだ。だから、最近の中国では、「中国夢」が流行語になっているのではないか。

 悪夢ではなく、美夢になることをただひたすら祈っている――。Have a nice dream!